11|1956 Chevrolet 210 Beauville|1062FC、9人乗りになった4-Door Wagon

1956 Chevrolet No.11

1956 ChevroletのWagon研究で、ここはかなり面白い一台です。

前回のTownsmanは、

Model 2109 / Fisher Style 1062F

4-Door、6-PassengerのStation Wagonでした。

今回の車は、

1956 Chevrolet Two-Ten Beauville。

Model 2119

Fisher Style 56-1062FC

4-Door。

そして――

9-Passenger。

1956 Chevrolet Factory Specificationsにも、

2119 / 56-1062FC / 9-passenger / 4-door / 7-window / all-steel body

と明記されています。

たった一文字、

1062F → 1062FC

になっただけに見える。

しかし車の役割は、

6人乗りWagonから9人乗りWagonへ変わります。

1062FCは、1956 Chevroletが「家族用Wagon」をどこまで拡張したのかを見るためのBODYです。


目次

IDENTIFICATION|2119 / 1062FC

まずFactory Identificationを固定します。

項目1956 Chevrolet 210 Beauville
SeriesTwo-Ten / 210
Model2119
Fisher Style56-1062FC
BODYStation Wagon
Doors4
Windows7-window
Seating9-Passenger
ConstructionAll-Steel Body
Rear GateDrop Gate + Lift Gate
Wheelbase115 in

Factory Specificationsでは、210 Seriesの9-Passenger Station Wagonとして2119 / 56-1062FCが記載されています。

別のModel Identification資料でも、

2119 — 4-Door 9-passenger Beauville Station Wagon — 1062FC

と一致します。

ここは強く確定できます。


BEAUVILLE|1956年に加わった9-Passenger Wagon

1956 Chevroletで重要なのは、

9-Passenger Station Wagonが新たにLineupへ加わったこと。

1956 Engineering Featuresでは、この年のPassenger Car Lineupが19 modelsとなり、前年より3 models増えた理由として、新しい4-Door Hardtopとともに9-passenger station wagonsの追加が説明されています。

つまりBeauvilleは単なる既存WagonのTrim追加ではありません。

1956 Chevroletの商品構成そのものを広げたBODYです。

210 Seriesでは、

Beauville 2119 / 1062FC

がその役割を担当しました。


210 WAGON FAMILY|3台から選べた

1956 Two-TenのWagonをもう一度並べます。

ModelNameFisher StyleDoorsSeats
2129Handyman1063F26
2109Townsman1062F46
2119Beauville1062FC49

これはかなり贅沢です。

まず、

2-Doorか4-Doorか。

さらに4-Doorを選んでも、

6人か9人か。

ChevroletはWagonの選択を装備だけではなく、

BODYとSeating Configuration

で用意していました。


1062F vs 1062FC|一文字の違い

ここが今回の中心です。

Townsman

Model 2109
1062F
4-Door
7-window
6-Passenger

Beauville

Model 2119
1062FC
4-Door
7-window
9-Passenger

Factory Specifications上では、両方ともAll-Steel Bodyで、RearにDrop GateとLift Gateを備えます。

非常によく似ています。

しかし、

乗車定員が3人違う。

そしてFisher Styleには、

C

が加わっています。

ここで注意したい。

「C=9-Passengerを意味する」

とまでは、現段階では断定しません。

1062FCが9-Passenger BODYであることはPrimary Sourceで確認できます。

しかし、Fisher BodyのSuffix Letter Cそのものの正式な定義は別問題です。

MUDIMUでは、似ているからといって意味を作りません。


9-PASSENGER|どうやって9人乗せたのか

6-Passenger Townsmanから9-Passenger Beauvilleへ。

単純に考えれば必要になるのは、

Third Seat。

Front Seat。

Second Seat。

そしてCargo Area側に追加されるSeating。

これによって最大9-Passengerを成立させます。

しかしMUDIMUとして重要なのは、

「3列シートでした」

で終わらせないことです。

調べたいのは、

Third SeatがBODYに何を要求したのか。

Cargo Floorはどう違うのか。

Seat Mountingはどう違うのか。

Wheelhouseとの関係は。

Seat収納時のCargo Areaは。

Rear Floor Structureは。

1062Fと1062FCの違いは、外から見えるTrimだけなのか。

それとも内部構造まで違うのか。

【画像予定:1062FC Third Seat / Cargo Area】

ここはNo.15「1062 BODY FAMILY」でさらに掘る価値があります。


現存車が教えてくれる危険な例

このBODYを研究すると、非常に面白い現存車が見つかります。

ある1956 Chevrolet WagonのCowl Tagには、

STYLE 56-1062FC

とあります。

つまりFactory IdentificationではBeauville 9-Passenger Wagonです。

ところが現在、その車は完全な9人乗り状態ではありません。

Third SeatのBackrestは残っているものの、Seat Bottomが欠落していると販売側が説明しています。

これはMUDIMUにとって最高の教材です。

現在の車だけを見て、

「6人しか座れないからTownsman」

と判断したら間違える可能性があります。

70年の間にSeatは外される。

Interiorは交換される。

Partsもなくなる。

でも、

Cowl Tagには1062FCが残る。


BODY TAG|現在のSeat数よりFactory Identity

だから実車Identificationでは順番が重要です。

現在何人座れるか。

ではない。

まず、

STYLE 56-1062FCか。

Factory資料では1062FCは、

210 Beauville / 9-Passenger Station Wagon

です。

その上で、

「なぜ現在Third Seatがないのか」

を考える。

つまり、

現在の状態からFactory仕様を推測するのではなく、Factory Identityを確定してから現在の変更点を探す。

AUTO LABOで実車を見る場合にも、この順番はかなり重要です。


SEVEN WINDOWS|外形の基本条件はTownsmanと近い

Factory Specificationsでは1062FCも、

4-Door / 7-window

です。

これはTownsman 1062Fと同じ。

したがって外観だけで両者を判断する場合は注意が必要です。

Door数だけでは分からない。

Window数だけでも分からない。

「4-Door Chevrolet WagonだからTownsman」でもない。

BODY Tagまで見る。

これが一番確実です。

【画像予定:1062F Townsmanと1062FC BeauvilleのSide View比較】


REAR GATE|Beauvilleも上下分割式

1062FCもFactory Specificationsでは、

drop and lift gates in rear

とされています。

上側のLift Gate。

下側のDrop Gate。

1956 ChevroletのConventional Wagon BODYらしいRear構成です。

つまりTownsmanからBeauvilleへ変わっても、

「9人乗りだからRear Door構造まで別物」

というわけではありません。

少なくともFactory Specification上では、同じRear Gate方式が記録されています。


WEIGHT|9人乗り化は数字にも現れる

Production/Specification系資料では、6-cylinder仕様で比較すると、

Townsman 1062F:

3,381 lb

Beauville 1062FC:

3,500 lb

とされています。

差は、

119 lb。

V8仕様でも、

Townsman:3,361 lb

Beauville:3,480 lb

で、同じ119 lb差です。

これは面白い数字です。

少なくとも仕様表上では、9-Passenger BeauvilleにはTownsmanに対して明確な重量増があります。

ただし、その119 lbすべてを「Third Seatの重量」と解釈するのは早すぎます。

Seat。

Floor。

Hardware。

Trim。

その他の仕様差。

何が重量差を構成しているかは、さらに資料が必要です。


PRICE|9人乗りには価格差もあった

同じ資料系統では、6-cylinder車のOriginal Priceは、

Townsman 1062F:

$2,263

Beauville 1062FC:

$2,348

です。

差は、

$85。

V8でも、

Townsman:$2,362

Beauville:$2,447

で、やはり$85差です。

つまり同じ210 4-Door Wagonでも、

9-Passenger Beauvilleの方が上。

ただしOriginal PriceについてはNo.31で改めて全BODYを横並びにして検証します。


PRODUCTION|Townsmanとは大きな差

Production資料の一系統では、

210 Beauville:

17,988台

とされています。

同じ資料でTownsmanは、

113,656台。

つまり、

Townsman:約11.4万台

Beauville:約1.8万台

です。

かなり違います。

9-Passengerという追加能力は魅力的ですが、6-Passenger Townsmanほど大量には作られていません。

ただしProduction Numberについては1956年型で資料間の差が複数確認されているため、最終確定はNo.32へ回します。

現段階では、

17,988台という有力資料値

として扱います。


17,988台は「超Rare」なのか

ここも言葉に注意します。

17,988台。

Nomadよりは多い。

Townsmanよりはかなり少ない。

だからといって、

「超希少車」

と簡単に書く必要はありません。

Production Numberと現在のSurvival Numberは別です。

BeauvilleはFamily Wagon。

実用品でした。

長く使われた個体も多かったでしょう。

しかし現存率を示す確かな資料がない限り、

「現在○台しかない」

とは言いません。

MUDIMUはRareという言葉を安売りしません。


BEAUVILLEという名前は210だけではない

ここでさらにややこしくなります。

1956 Chevroletには、

もう一台Beauvilleがあります。

Bel Air Beauvilleです。

210 Beauville

2119
1062FC

Bel Air Beauville

2419
1062DFC

どちらも、

4-Door。

9-Passenger。

Station Wagon。

そして、

Beauville。

Factory Specificationsでも両車が別Seriesの9-Passenger Wagonとして並んでいます。

つまり、

「1956 Beauville」だけでは車を特定できません。

210なのか。

Bel Airなのか。

ここでもSeriesとStyle Numberが必要です。


1062FC vs 1062DFC|さらにDが加わる

並べてみます。

Townsman:

1062F

210 Beauville:

1062FC

Bel Air Beauville:

1062DFC

この並びは本当に面白い。

3台とも4-Door Wagon Family。

しかし、

6-Passengerから9-Passengerへ。

210からBel Airへ。

それに合わせるようにStyle Numberも変化しています。

ただし繰り返します。

DやCという文字の意味そのものは、Factory定義を確認するまで推測しません。

ここをNo.15で追います。


BODY FAMILY|部品適合からも関係が見える

面白い補助資料があります。

現在のReplacement Windshieldの適合情報では、1955–56 Chevroletの4-Door Station Wagonとして、

1062F

1062DF

1062FC

が同じ適合群に含まれています。

これはFactory Engineering資料ではないので、BODY同一性を確定する証拠にはしません。

しかし、

少なくともWindshield Geometryを共有するBODY群として扱われている

ことは分かります。

こういうParts Interchange情報も、BODY Familyを解く補助証拠として使えます。

MUDIMUではPrimary Sourceを軸にしつつ、こうした部品情報も横から当てていきます。


COLOR|1062FCの実車からPaint Codeが見える

先ほどの現存1062FCには、

Paint Code 707C

が残っています。

販売資料では、

India Ivory / Nassau Blue

のTwo-ToneとしてDecodeされています。

ただし、これはあくまでその個体のPaint Code。

Beauville=この配色

ではありません。

No.28 Factory Colors。

No.29 Two-Tone Guide。

そこで1956 Chevrolet全体のPaint Chartと照合します。

また販売側がこの配色を「New Speedline」と呼んでいますが、MUDIMUではその名称をFactory terminologyとして採用する前にPeriod Chevrolet資料で確認します。

ここも勝手に確定しません。


TRIM|BODYだけ合っていても安心しない

同じ現存車には、

TRIM 609-LA

というTag情報も記録されています。

しかしInteriorは70年間で変更される可能性があります。

Seat Upholstery。

Door Panels。

Cargo Trim。

Third Seat。

すべて確認が必要です。

特にBeauvilleの場合、

Third Seatが欠落していると車のIdentityそのものを誤認しやすい。

だからBODY CodeとInterior Conditionを別々に記録します。


ENGINE|1062FCでもSixとV8

Production/price資料では1062FCについて、

I-6。

V8。

両方のSpecificationが掲載されています。

したがって、

Beauville=V8

とは言えません。

BODY Codeは1062FC。

Engineは別Identification。

これはこれまでと同じです。

No.41以降でBODY × Engineの組み合わせを改めて整理します。


9-PASSENGERという商品力

1956年当時の視点で考えると、この車の意味はかなり分かりやすい。

一台で、

9人。

現在なら大型SUVやMinivanが担当する領域です。

しかし1956年のChevroletでは、

Passenger CarベースのStation Wagon

がその仕事をしました。

しかもTruck系Suburbanではありません。

Chevrolet Passenger CarのStylingを持ったまま、大人数を運べる。

これがBeauvilleの役割です。


TOWNSMANとBEAUVILLE、どちらを選ぶ?

1956年に210 Wagonを買うとして、

6人で十分ならTownsman。

さらに乗車人数が必要ならBeauville。

2-DoorでよければHandyman。

つまり210 Wagonだけで、

BODYを用途に合わせて選択できた。

これが1956 Chevroletの強さです。

現代から見ると「210 Wagon」という一種類に見えます。

当時の資料を見ると全然違う。

Handyman、Townsman、BeauvilleはTrim違いではない。用途そのものをBODYで分けた3台だった。


MARKETPLACE MISLABEL|Seatがなくても1062FC

これは将来AUTO LABOで1956 Wagonを扱うなら、かなり実用的な知識です。

たとえば4-Door Wagonが売りに出ている。

Third Seatがない。

販売者は、

「Townsmanだと思う」

と言っている。

そこで終わらない。

Cowl Tagを見る。

56-1062FC。

ならFactory資料上は、

210 Beauville 9-Passenger Wagon。

つまり、

「Townsman」

ではなく、

Third Seat関連部品を失ったBeauville

である可能性をまず調べるべきです。

これは車の価値判断にもRestoreにも重要です。


IDENTIFICATION CHECK|1062FCを見る順番

1956 Chevrolet Beauvilleらしい車を見つけたら、

1956 Model Yearか

210 Seriesか

Model 2119か

STYLE 56-1062FCか

4-Door / 7-window Station Wagon BODYか

Factory上は9-Passengerか

Third Seatは残っているか

Rear Floor / Seat Hardwareは残っているか

Body Numberは何か

Paint Codeは何か

Trim Codeは何か

Engine / TransmissionはFactory Specificationと整合するか

この順番で調べます。

Third SeatがないからTownsman。

これはやらない。


MUDIMU VIEW|「9人乗り」がBODYを面白くする

個人的に1062FCで一番面白いのは、

Rareだからではありません。

普通の1956 Chevrolet Wagonに見えるのに9人乗り。

ここです。

外から見れば、

1950年代の4-Door Wagon。

でもFactory Identificationを追うと、

1062FC。

Third Seat。

9-Passenger。

そして約1.8万台。

突然、車の見え方が変わります。

BODY研究の面白さは、形を見ることだけではない。その形の中で「何ができたのか」まで分かることにある。

1062FCは、その典型です。


CONCLUSION|1062FCはTownsmanにSeatを足しただけなのか

1956 Chevrolet Two-Ten Beauville。

Model 2119。

Fisher Style 56-1062FC。

4-Door。

7-window。

9-Passenger。

All-Steel Station Wagon。

Drop Gate + Lift Gate。

ここまでは1956 Chevrolet Factory Specificationsで強く確認できます。

そしてTownsmanは、

1062F / 6-Passenger。

Beauvilleは、

1062FC / 9-Passenger。

ここから次の疑問が生まれます。

1062FCは本当に1062FへThird Seatを追加しただけなのか。

それともFloorやBody Structureにも専用部分があるのか。

この疑問は残します。

なぜなら、

分からないところを勝手に埋めないことも図鑑だからです。

そして次はさらに面白い。

12|1956 Chevrolet Bel Air Beauville — 1062DFC

同じBeauville。

同じ9-Passenger。

同じ4-Door Wagon。

でも210からBel Airへ行くと、

1062FC → 1062DFC。

次はこの「D」が加わったBODYを追います。

MUDIMU Research Note

A|Primary Source確認済み
2119 / 56-1062FC、4-Door、7-window、9-Passenger、All-Steel Body、Drop/Lift Rear Gates。

A|1062FとのFactory上の違い
1062F=2109 Townsman / 6-Passenger、1062FC=2119 Beauville / 9-Passenger。

?|Suffix Cの正式な意味
1062FCが9-Passengerであることは確認済み。ただし「C」という文字自体のFisher Bodyによる正式定義は未確認。推測しない。

B〜C|Production
17,988台という資料値あり。1956 Production Numberには資料差があるためNo.32で再検証。

要追加研究
1062Fと1062FCのFloor、Third Seat Mounting、Cargo Structure、Body Shell共通範囲。ここはNo.14「6-Passenger vs 9-Passenger」とNo.15「1062 BODY FAMILY」で本格的に掘ります。

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この記事を書いた人

1959、1960、1962、1968年式Chevroletの所有経験を持つ。現在、当時のChevrolet資料をもとにBODY、COLOR、TRIMを中心とした日本語アーカイブを構築中。

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