55|1956 Chevrolet 235 Blue-Flame Six|V8時代にも「普通のChevy」を支え続けた直列6気筒

1956 Chevrolet No.55

1956 ChevroletのEngineを語ると、どうしても265 Small Block V8が目立ちます。

1955年に登場した新しいChevrolet V8。

Bel Air。

Sport Coupe。

Corvette。

そして後のSmall Block伝説。

しかし1956年当時のChevroletを、後世の人気だけで見てはいけません。

その隣にはまだ、

235.5 cu.in. Inline Six

がいました。

1956 Passenger Chevroletでは、このEngineはBlue-Flame 140として140 hpを発生しました。Factory Engineering資料では8.0:1 compression、Single-barrel carburetorを採用し、1955年のManual車123 hp、Powerglide車136 hpという二本立てから、1956年には140 hp仕様へ整理されています。

つまり235は、V8が登場したから仕方なく残された古いEngineではありません。

1956年にもChevrolet自身が改良を続けていた現役Engineです。

265 V8が「これからのChevrolet」なら、235 Sixは1956年の道路を実際に支えていた「普通のChevrolet」だった。


目次

BLUE-FLAME 140|1956 Passenger Carの235

まず1956 Passenger Car仕様を数字で確認します。

項目1956 Blue-Flame 140
ConfigurationInline 6
Valve systemValve-in-head / OHV
Displacement235.5 cu.in.
Bore3.56 in.
Stroke3.94 in.
Compression Ratio8.0 : 1
CarburetorSingle-barrel
Gross Horsepower140 hp @ 4200 rpm
Gross Torque約210 lb-ft @ 2400 rpm

Chevroletの1956 Prestige資料は235.5 cu.in.、3.56 × 3.94インチ、8.0:1、140 hpとしています。1956 Engineering FeaturesもBlue Flame 140のOutput向上を明記しています。

【画像予定:1956 Chevrolet Blue-Flame 140 Factory Engine illustration】


235という数字は何なのか

235は排気量をCubic Inchで表した呼称です。

正確なFactory displacementは、

235.5 cubic inches。

Metricにすると約3.86Lです。

Bore 3.563インチ。

Stroke 3.938インチ。

つまりBoreよりStrokeの方が長い、Long-stroke型のInline Sixでした。1956 Truck Factory資料でも235.5 cu.in.、3.563 × 3.938インチという基本寸法が確認できます。

単純に「3.9Lもあるのに140馬力しかない」と現代Engineの尺度で見るものではありません。

1950年代のAmerican Carが求めていたものは、最高回転数だけではありません。

低い回転域から車体を普通に動かせること。

扱いやすいこと。

日常的に使えること。

その性格を見る必要があります。


1955 → 1956|Blue-Flameはちゃんと進化している

ここは非常に面白いところです。

1955 Passenger Chevroletの235は、Transmissionによって仕様が分かれていました。

Manual transmissionでは、

Blue-Flame 123。

Powerglideでは、

Blue-Flame 136。

1956年になると、

Blue-Flame 140

へ進みます。

Chevrolet Engineering Featuresによれば、1956年の140 hp化にはHigh-lift camshaftと8.0:1 compression ratioという二つの基本変更が関係しています。Manual系では前年から17 hp、Powerglide系では4 hp増加したとFactory資料自身が説明しています。

つまり、

1955

Manual
Blue-Flame 123
      │
      │
      ↓
1956
Blue-Flame 140


1955

Powerglide
Blue-Flame 136
      │
      │
      ↓
1956
Blue-Flame 140

という変化です。

これは重要です。

V8登場後もChevroletはSixを放置していなかった。


140 HORSEPOWER|265との差は22馬力から始まった

1956 Passenger Chevroletの基本V8は、265 Turbo-Fire。

Manual系の基本仕様では162 hp。

235 Blue-Flameは140 hp。

差は、

22 hp。

もちろんCylinder countもEngine architectureも違います。

そして高性能265では差がさらに大きくなります。

しかし、

「Sixは非力でV8とはまったく別世界」

というほど単純でもありません。

普通に1956 Chevroletを購入する人にとって、140 hpの235は十分に現実的な選択肢でした。


150だけのEngineではない

235で非常によくある誤解が、

安い150に載っていたEngine

という見方です。

確かに150と235の組み合わせは自然です。

しかしBlue-Flame Sixは150専用Engineではありません。

210にも。

Bel Airにも。

そして複数のBODYに存在しました。

実際、1956 ChevroletのPeriod specificationではPassenger model用Blue-Flame 140として扱われており、現存資料でも210 Sport CoupeやBel Air Sport Coupeを含む235仕様が確認できます。

ここはMUDIMUではかなり重要です。


BEL AIR × SIX|豪華BODYだからV8とは限らない

たとえば1956 Bel Air。

豪華なTrim。

豊富なChrome。

Distinctive side treatment。

Sport Coupe。

Sport Sedan。

Convertible。

Nomad。

これだけを見ると、ついV8を想像します。

しかし、

Bel AirというSeriesとV8は同義ではありません。

Bel Air 4-Door Sedanにも235 Blue-Flame仕様が存在します。

したがって現存するBel Airを見て、

「Bel AirなのにSixだからEngine swapされた」

と判断するのは間違いです。

Factory Six carである可能性があります。


SPORT COUPEにも235がある

さらに面白いのがHardtopです。

1956 Chevrolet 210 Sport Coupe。

Bel Air Sport Coupe。

BODYだけ見れば、いかにもV8が似合います。

しかし235 Blue-Flame仕様は存在します。

これはMUDIMUのBODY研究とEngine研究がつながる典型例です。

Sporty BODY ≠ V8。

HardtopだからV8。

Bel AirだからV8。

Chromeが多いからV8。

こういう現代からの印象でFactory specificationを決めてはいけません。


235 SIXはChevroletの「基準点」だった

1956 Passenger CarのEngine lineupを考えると、235は重要な基準になります。

そこから、

265 2-barrel V8。

265 4-barrel。

さらにHigh-performance仕様。

へ上がっていく。

つまり235は「選ばれなかったEngine」ではありません。

Chevrolet Passenger Carの出発点となるEngineです。

BODYでは150・210・Bel AirというSeries hierarchyがあり、

Engineでは235から複数の265仕様へ広がる。

1956 Chevroletは、

BODYの選択

と、

POWERの選択

を組み合わせて一台を作る車でした。


SINGLE-BARREL|派手さのないFuel System

Blue-Flame 140はSingle-barrel carburetorを使用します。

一方265 V8では2-barrel、4-barrel、さらに高性能仕様へとCarburetionが広がっていきます。

ここでも235の役割は明快です。

最大Powerを追うEngineではありません。

日常のChevroletを動かすための、比較的シンプルなFuel systemです。

Factory資料でもBlue-Flame 140はSingle-barrel carburetor仕様として記載されています。


INLINE SIX|長いEngine Bayの中に並ぶ6 Cylinder

Inline Sixなので、Cylinderは一直線に並びます。

V8とはEngine Bayの見え方もまったく違います。

235 INLINE SIX

[1][2][3][4][5][6]


265 V8

[ ][ ][ ][ ]
 \       /
  \     /
[ ][ ][ ][ ]

BODY外観が同じ1956 Chevroletでも、Hoodを開ければ別の世界です。

長いInline Engine。

Single carburetor。

Valve cover。

Exhaust / Intake layout。

こうしたEngine Bayそのものも、Originalityを見る重要な資料になります。


4-BEARING CRANKSHAFT|現代Engineとは違う設計

1956 Passenger Carの235は4-bearing crankshaftを持つ設計でした。Period Chevrolet資料にも4-bearing crankshaftと記されています。

後世のEngineだけを知っていると、Main bearing数などを単純に優劣で見たくなります。

しかしMUDIMUでは、

「古いからダメ」

とは見ません。

このEngineがどの時代に設計され、どう改良され、1956年にどう使われていたのかを見る。

235は、Chevrolet Inline Sixの長い発展の途中にいるEngineです。


TRUCKにも235|ただしPassenger Carと一括りにしない

235.5 cu.in. Sixは1956 Chevrolet Truckにも存在します。

Factory Truck specificationでは、

235.5 cu.in.

3.563 × 3.938 in.

Valve-in-head 6-cylinder

8.0:1 compression

という基本データが確認できます。

3100。

3200。

3600。

3800。

その他複数のTruck Seriesへ235系Sixが展開されています。

ただし注意。

Passenger CarのBlue-Flame 140と、Truckに搭載された235を、名前と排気量だけで完全に同じ仕様として扱わない。

用途別Factory specificationを確認します。


TRUCKでは261も存在する

そしてNo.54をさらに正確に補足しておく必要があります。

1956 Chevrolet Truckは、

235と265だけでは完全ではありません。

Factory Truck資料にはHeavy-duty applicationとして、

261 cu.in. Inline Six

も記録されています。

これは今回の235記事の主役ではありませんが、MUDIMU台帳上は落とせません。

1956 Chevrolet全体をPassenger Car中心に見れば235+265が大きな柱。

しかしTruckまで完全に含めるなら261 Sixも存在する

ここは訂正して記録しておきます。


CORVETTEにはもう235はいない

ここも歴史の境目です。

初期CorvetteはBlue Flame Sixを搭載していました。

しかし1955年に265 V8が登場。

1956 CorvetteはV8のSports Carへ進みます。

つまり1956年には、

普通のPassenger Chevroletでは235がまだ重要。

TruckでもSixが重要。

しかしCorvetteはすでにSixから離れている。

同じChevroletの中で、Engineの役割が分かれ始めています。


1956年の道路を想像すると235の意味が変わる

現在Classic Chevrolet市場を見ると、V8車が圧倒的に目立ちます。

RestomodもV8。

Hot RodもV8。

Collector Car広告でもV8が強調されます。

その結果、

「Tri-Five Chevy=Small Block V8」

という印象が強くなります。

しかし1956年当時の道路を再現したいなら、それでは片寄ります。

150 Sedan。

210 Sedan。

Bel Air。

Wagon。

Commercial use。

そしてTruck。

そこにはSix-cylinder Chevroletもいました。

現在人気の仕様と、当時普通だった仕様は同じとは限らない。

これはMUDIMU全体で非常に大事な考え方です。


V8 SWAPで消えていった235

もう一つ、現在235が目立ちにくい理由があります。

Engine swapです。

1955–57 Chevroletは、後年のSmall Block Chevroletを載せやすいClassicとして長く人気を持ちました。

そのためFactory Six carから235が外され、

283。

327。

350。

その他Small Block。

へ交換された個体があります。

現在V8が載っている1956 Chevroletでも、

新車時からV8だったとは限らない。

逆に、Original 235を残した個体は「速くないから価値がない」と簡単に扱うべきでもありません。

歴史資料として見れば非常に面白い。


ORIGINAL 235|何を確認するのか

現存車で「Original 235」と説明されていたら、MUDIMUではその言葉だけを信用しません。

確認する対象は、

Block Casting Number

Casting Date

Engine Stamping

Cylinder Head

Carburetor

Intake / Exhaust

Generator and accessories

Vehicle production date

Transmission

です。

さらに、

FactoryでそのBODYとEngineの組み合わせが成立していたか。

ここまで確認します。


PAINTだけで235を判断しない

Blue-Flameという名前からEngine colorの話へ行きたくなります。

しかし現存車のEngine paintだけでOriginalityを判断するのは危険です。

70年近い時間の中で、

Rebuild。

Repaint。

Replacement engine。

Cylinder head replacement。

Accessory replacement。

が行われている可能性があります。

きれいなFactory-style colorだからOriginal。

汚れているからOriginal。

どちらも成立しません。

CastingとStampingを先に見る。

Colorはその後です。


MUDIMU VIEW|Sixだから「外れ」ではない

1956 Bel Air Sport Coupeを買うとします。

一台は265 V8。

もう一台はFactory configurationを保った235 Six。

どちらが正しいChevroletか。

両方です。

V8の方がCollector marketで人気が高い可能性はあります。

しかしMUDIMUが記録したいのはMarket rankingだけではありません。

Chevroletが1956年に何を作ったのか。

そこでは235 Sixも立派な主役です。


1955と1956を見分ける材料にもなる

235は1955と1956でOutput specificationが変わっています。

1955 Passenger Carでは123 hp / 136 hp仕様。

1956では140 hp。

したがってEngine周辺のFactory specificationを追うことで、

1955仕様なのか。

1956仕様なのか。

後年部品が入っているのか。

を判断する材料になります。

BODYだけで年式を追うMUDIMUから、

Engineまで含めて年式を検証するMUDIMU

へ一段深くなります。


1957にも235は続く

265の歴史だけを見ると、

1955 265登場。

1956発展。

1957 283登場。

と急速に変化します。

しかし235 Blue-Flame 140は1957 Passenger Chevroletにも残りました。1957 Engine dataでも235、8.0:1、140 hp @ 4200 rpmが確認できます。

つまりV8側が急速に進化しても、Sixは突然消えません。

この並行進化こそ1950年代Chevroletの面白さです。


235 BLUE-FLAMEを一言で表すなら

265 V8を、

Chevroletの未来を作ったEngine

とするなら、

235 Blue-Flameは、

Chevroletの日常を支えたEngine

です。

派手ではない。

Dual Four Barrelでもない。

Corvetteの主役でもない。

しかしSedanにもHardtopにもBel Airにも存在した。

そしてTruckにも235系Sixが使われた。

だからMUDIMUでは235を「V8ではない方」とは呼びません。


CONCLUSION|V8が生まれても、普通のChevyはSixで走っていた

1956 Chevrolet Blue-Flame 140。

235.5 cu.in.

Inline Six。

8.0:1 compression。

Single-barrel carburetor。

140 hp @ 4200 rpm。

1955年からEngine specificationを改良し、1956年のPassenger Chevroletを支えたEngineでした。

重要なのは140 hpという数字だけではありません。

150だけのEngineではない。

Bel Airにも存在する。

Sport Coupeにも存在する。

V8が登場しても改良された。

そして現在はV8 swapによってOriginal Six carが見えにくくなっている。

1956 Chevroletを当時の姿で理解するなら、265 V8だけを見てはいけない。
235 Blue-Flame Sixを知って初めて、「普通の1956 Chevy」が見えてくる。

次は、その235の隣でChevroletの未来を変え始めたEngineです。

No.56|265 Small Block V8。

1955年に生まれたSmall Blockが、1956年にはどこまで進化していたのか。

ここはかなり面白くなります。

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この記事を書いた人

1959、1960、1962、1968年式Chevroletの所有経験を持つ。現在、当時のChevrolet資料をもとにBODY、COLOR、TRIMを中心とした日本語アーカイブを構築中。

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