1956 Chevrolet No.13
1956 Chevrolet Wagonの中で、最も有名な一台。
Nomad。
しかしMUDIMUでNomadを扱うなら、
「Tri-Fiveを代表する人気Wagon」
だけでは全然足りません。
見るべきは名前より、
BODYです。
1956 Chevrolet Factory SpecificationsでNomadは、
Model 2429
Fisher Style 56-1064DF
Bel Air Series
2-Door
6-Passenger
のStation Wagonとして記録されています。Chevrolet Motor Division発行のFactory Specificationsで確認できるため、ここはPrimary Sourceとして固定できます。
そして1956年には、Nomad以外にも2-Door Wagonが2台ありました。
150 Handyman。
210 Handyman。
つまり、
Nomadが特別なのは「2-Door Wagonだから」ではない。2-Door Wagonという同じカテゴリーの中で、まったく別のBODYを与えられていたからです。
ここを掘ります。
IDENTIFICATION|2429 / 1064DF
まずFactory Identityを固定します。
| 項目 | 1956 Chevrolet Nomad |
|---|---|
| Series | Bel Air / 2400 |
| Model | 2429 |
| Fisher Style | 56-1064DF |
| BODY | Station Wagon |
| Doors | 2 |
| Seating | 6-Passenger |
| Construction | All-Steel Body |
| Wheelbase | 115 in |
| Model Year | 1956 |
1956 ChevroletのPrimary資料群は現在もPeriod brochure、Engineering Features、Factory Specificationsなどがまとまって残っています。
さらに現存車のCowl Tagでも、
56-1064DF
が確認できます。
ある現存Nomadでは、
STYLE 56-1064DF
BODY CL 5837
TRIM 591
PAINT 707
というTagが残っています。
ここで重要なのは、
1064DFはStyle Number。
CL 5837はその個体のBody Number。
同じ「BODY番号」ではありません。
1956 WAGON MAP|Nomadは6台中の1台
1956 Chevroletには6種類のPassenger Station Wagonがありました。
| Series | Wagon | Model | Fisher Style | Doors | Seats |
|---|---|---|---|---|---|
| 150 | Handyman | 1529 | 1263F | 2 | 6 |
| 210 | Handyman | 2129 | 1063F | 2 | 6 |
| 210 | Townsman | 2109 | 1062F | 4 | 6 |
| 210 | Beauville | 2119 | 1062FC | 4 | 9 |
| Bel Air | Beauville | 2419 | 1062DFC | 4 | 9 |
| Bel Air | Nomad | 2429 | 1064DF | 2 | 6 |
こうして見るとNomadの位置がよく分かります。
Nomadだけを見てはいけません。
6種類あるWagonの頂点側に置かれた、Bel Airの2-Door Wagon。
これが1956 Nomadです。
THREE 2-DOOR WAGONS|ここが面白い
さらに2-Doorだけ抜き出します。
150 Handyman
1529
1263F
2-Door
6-Passenger
210 Handyman
2129
1063F
2-Door
6-Passenger
Bel Air Nomad
2429
1064DF
2-Door
6-Passenger
全部、
2-Door / 6-Passenger / Station Wagon。
ところがFisher Styleは、
1263F。
1063F。
1064DF。
Nomadだけ1064です。
ここが重要です。
1063F vs 1064DF|NomadはHandymanの豪華版ではない
現在のClassic Car市場だけを見ていると、
150 Handyman。
210 Handyman。
Nomad。
を「安い・中間・高級」というTrim階層だけで理解してしまいそうです。
しかしBODY Codeを見ると違います。
210 Handymanは、
1063F。
Nomadは、
1064DF。
Seriesが違うだけなら、同じ基本Style NumberにSeriesを示すSuffixが加わるような構成も考えられます。
ところがNomadは、
1063 → 1064
と基本番号そのものが違う。
つまりMUDIMUでは、
NomadをHandymanへBel Air Trimを付けた車として扱わない。
BODYそのものを別に研究する必要があります。
ROOFLINE|NomadをNomadにしている場所
Nomadの特徴は、Chromeだけではありません。
特に重要なのが、
Roofline。
普通の2-Door Handymanとは、Cabin後半の造形が明確に違います。
Nomadでは低く流れるようなRoof。
傾斜したB-Pillar。
独特なRear Side Glass。
Rearへ向かうGlass Area全体。
これらが一つの造形として成立しています。
二次資料でもNomadは、通常のChevrolet Wagonとは異なるHardtop的なRoof Treatmentを持つ車として説明されています。
【画像予定:1956 210 Handyman 1063FとNomad 1064DFの完全Side View比較】
ここは文章より図が強い。
将来MUDIMU独自図で、
Roof / B-Pillar / Side Glass / Rear Quarter
を線で比較したいところです。
B-PILLAR|一本の柱が車の性格を変える
Nomadを横から見ると、B-Pillarが重要です。
普通の実用Wagonのような垂直感ではなく、
前方へ傾斜した独特のライン
を持っています。
1956年型ではBel AirのSide Trimも、このNomad固有のB-Pillarとの関係から通常のBel Airとは違う処理になっていると二次資料で説明されています。
これは面白い。
つまりNomadでは、
BODYが特殊だから、
TrimまでBODYに合わせなければならない。
単にBel AirのMoldingをそのまま貼ればNomadになるわけではありません。
SIDE GLASS|窓を見るとHandymanとの違いが分かる
Classic ChevroletのBODYを見るとき、
Chromeより先に、
Glassを見た方がいい場合があります。
Chromeは交換できる。
Moldingも変更できる。
Badgeも付けられる。
しかし、
Roof。
Pillar。
Glass Opening。
Door Opening。
Rear Quarter。
このあたりはBODYそのものです。
NomadとHandymanを比較するときも同じです。
Side Glassの形を見れば、別BODYであることがかなり分かりやすい。
これはMUDIMUのBODY Identificationで今後かなり使える方法です。
DOOR|「2-Door」という情報だけでは足りない
Handymanも2-Door。
Nomadも2-Door。
だから同じDoorなのか。
ここも簡単には決めません。
Nomadについては、Bel Air HardtopやConvertibleとのDoor / frameless glassの関係を指摘する二次資料があります。
非常に興味深い情報です。
ただしMUDIMUとしては、
1956 Parts BookやFisher Body資料で部品共通性を確認してから最終確定
とします。
「形が似ている」
と、
「同じ部品番号」
は別問題です。
ここは後で掘る価値があります。
FRAMELESS GLASS|WagonなのにHardtop的
NomadのCharacterを理解するうえで、もう一つ重要なのがDoor Glassです。
一般的なWagon的BODYというより、
Hardtop / Convertible的な要素
を取り込んだStylingがNomadにはあります。
だからNomadは、
「荷物を積めるBel Air」
だけではない。
Passenger CarのSpecialty BodyとStation Wagonを混ぜた存在
として見る方が分かりやすい。
これがHandymanとの決定的なCharacter差です。
REAR WHEEL OPENING|ここも普通のChevyと違う
Nomadにはもう一つ面白いBODY Detailがあります。
Rear Wheel Opening。
二次資料では、通常のChevroletとは異なるFully Radiused Rear Wheel OpeningがNomadの特徴として挙げられています。
これはBODY研究ではかなり重要です。
Roofだけではない。
Glassだけでもない。
Body Sideの下側までNomad専用のCharacterを持っている。
つまり1064DFを理解するには、
上半分だけ見てはいけません。
【画像予定:1063F Handymanと1064DF NomadのRear Wheel Opening比較】
REAR|Nomadの後ろ姿も専用世界
Nomadの個性はRearにも続きます。
傾斜したRear Window。
Tailgate。
Chrome Treatment。
RoofからTailgateへ続く造形。
通常の2-Door Wagonとは違う世界です。
Nomadには上下分割式のRear Gateがありますが、重要なのは「WagonだからGateがある」ということではありません。
そのGateまでNomadのStylingに組み込まれている。
ここもHandymanとの比較図を作る価値があります。
BEL AIR|Nomadは2400 Series
Nomadは独立Seriesではなく、
Bel Air / 2400 Series
に属します。
1956 Engineering Featuresでも、2400 SeriesのNomadが前年から継続されたことが説明されています。1956年のChevrolet資料群にはEngineering Featuresも保存されています。
つまり1956年のBel Air Wagonは二台。
Beauville 2419 / 1062DFC
そして、
Nomad 2429 / 1064DF。
同じBel Airなのに、性格はほぼ正反対です。
BEAUVILLE vs NOMAD|Bel Airの二つのWagon
| Bel Air Beauville | Bel Air Nomad | |
|---|---|---|
| Model | 2419 | 2429 |
| Fisher Style | 1062DFC | 1064DF |
| Doors | 4 | 2 |
| Seats | 9 | 6 |
| Character | Family / Capacity | Styling / Specialty |
Beauvilleは9人。
Nomadは6人。
Beauvilleは4-Door。
Nomadは2-Door。
同じBel Air Station Wagonなのに、
「たくさん乗せる」方向と「美しく見せる」方向
へ分かれています。
これが1956 ChevroletのBODY Variationです。
NOMADは実用車なのか、SPECIALTY CARなのか
答えは、
両方です。
Station Wagonである以上、
Rear Seat。
Cargo Area。
Rear Gate。
を持つ実用車です。
しかしBODYを見ると、
実用性だけを優先したWagonではない。
2-Door。
特殊なRoofline。
特殊なGlass Area。
特殊なPillar。
独特なRear Quarter。
Bel Air Trim。
つまり、
Wagonとして使えることを残したまま、Stylingを優先したChevrolet。
これがNomadの面白さです。
1955 NOMADとの関係
Nomadは1956年に突然登場した車ではありません。
Production Chevroletとしては1955年型から存在します。
したがって1956 Nomadを見るときには、
1955 → 1956
で何が変わったのかを見る必要があります。
1956 Chevrolet全体ではFront Stylingが大きく変わります。
Nomadも1956 ChevroletのFaceへ更新されます。
しかし重要なのは、
Nomadという特殊な2-Door Wagonの考え方自体は継続した
ことです。
つまり1956は、
Nomad誕生の年ではなく、
Nomad BODY Conceptの2年目。
ここは年式判定でも重要です。
1956だけを見ると分からないもの
1955 Nomad。
1956 Nomad。
1957 Nomad。
この3台を後で並べると、
さらに面白くなるはずです。
同じNomadでも、
Front。
Rear。
Side Trim。
Color Treatment。
BODY Detail。
が変わる。
しかし、
2-Door Specialty Wagon
という核は続きます。
MUDIMUでは1957へ進んだ段階で、
1955 vs 1956 vs 1957 Nomad BODY
を独立記事にしてもいいレベルです。
PRODUCTION|7,886か8,103か
ここは今回も数字を一つに決めません。
1956 NomadのProduction Numberについては、
7,886台
という資料系統があります。現在の販売資料でもこの数字が広く使われています。
一方、別の1956 Production集計では、
8,103台
という数字があります。
したがって現段階では、
約8,000台
として扱うのが安全です。
最終的なProduction NumberはNo.32で出典系統まで追います。
有名なNomadだからといって、数字だけ都合よく確定しません。
「RARE NOMAD」の言葉にも注意
Nomadは人気車です。
Productionも約8,000台規模。
しかし、
Production Number ≠ 現存台数
です。
現在何台残っているかを示す信頼できるFactory資料は当然ありません。
したがって、
「世界に○台しか残っていない」
「超希少」
のような表現は、根拠が確認できない限り使いません。
NomadはRareという言葉を付けなくても十分面白い車です。
BODY TAG|1064DFが残っている
現存する1956 Nomadの一例には、
STYLE 56-1064DF
BODY CL 5837
TRIM 591
PAINT 707
というCowl Tag情報があります。
この個体は現在の塗装がFactory Tag通りではないと販売側自身が説明しています。
これも重要な教材です。
BODYは1064DF。
しかし現在のColorはOriginalとは限らない。
BODY IdentityとPaint Originalityは別々に判定します。
PAINT 707|現存車からFactory Colorへ戻る
同個体のPaint Codeは、
707。
販売資料では、
India Ivory / Nassau Blue
としてDecodeされています。
ところが現在は別のBlueを使ったRestorationになっている。
つまり写真だけ見て、
「1956 Nomadの純正色はこのBlue」
と判断すると危険です。
正しい順番は、
Paint Tag → Period Paint Chart → BODY適用確認 → 現在色との比較。
No.28・29でやります。
TRIM 591|内装もBODYとは別に追う
同じNomadのTrim Codeは、
591。
販売資料ではLight Blue系のCloth / Imitation LeatherとしてDecodeされています。
ただしこれも二次資料によるDecodeです。
No.30ではPeriod Trim資料と照合します。
NomadはRestorationやCustomの対象になりやすい。
だからこそ、
現在きれいだからOriginal
とは考えない。
ENGINE|Nomad=V8とは限らない
これもClassic Chevyで起きやすい誤解です。
Nomadを見ると、
V8。
Power Pack。
Powerglide。
というイメージが強い。
実際、現存する1064DFには265 V8とPowerglideを備えた個体があります。
しかし、
その個体がV8だからNomad全部がV8だった
とはなりません。
BODYとPowertrainは分離して研究します。
No.41以降で、
NomadにFactory設定されたEngine / Transmission Combinationを確認します。
RESTOMOD問題|Nomadは特に注意
Nomadは人気が高いため、
現存車にはRestomodも非常に多い。
Modern V8。
Automatic Transmission。
Air Conditioning。
Disc Brake。
Custom Interior。
Large Wheels。
現在の販売車にも大幅にModernizeされた1064DFがあります。
もちろん車として悪いわけではありません。
しかし、
1956 Chevroletの資料として見る場合には別問題。
写真をBODY Referenceに使える部分。
使えない部分。
を分ける必要があります。
NOMAD CLONE|見た目だけでは判断しない
そしてNomadにはもう一つ問題があります。
価値が高い車ほど、
Nomad風に仕立てられた車
についても注意が必要です。
MUDIMUでは実車をNomadとして評価するなら、
まずCowl Tag。
56-1064DF
を確認したい。
さらにVIN。
Body Number。
Trim。
Paint。
Factory Construction。
を照合する。
BadgeだけでNomadとは判断しません。
これは将来AUTO LABOで車を扱う場合にも重要なポイントです。
HANDYMANとの違いを見る場所
実車で1956 2-Door Wagonを見たら、まず次を見ます。
Roofline
↓
B-Pillar angle
↓
Door / Door Glass
↓
Rear Side Glass
↓
Rear Quarter
↓
Rear Wheel Opening
↓
Tailgate / Rear Window
↓
Cowl Tag
最後にChromeやBadge。
この順番の方がBODYを理解しやすい。
Moldingは交換できる。BODY Geometryは簡単には交換できない。
MUDIMUではこれを基本にします。
1063Fと1064DFを並べる意味
Nomadの記事単体なら、格好いい写真を載せれば成立します。
でもMUDIMUでは、それだけでは弱い。
本当に見たいのは、
210 Handyman 1063F
の横に、
Bel Air Nomad 1064DF
を置いた状態です。
両方、
1956。
2-Door。
6-Passenger。
Station Wagon。
条件を揃えた瞬間、
BODYの違いだけが浮かび上がる。
これこそMUDIMU向きの比較です。
MUDIMU VIEW|Nomadが凄いのは有名だからではない
Nomadを特別扱いする理由を、
「人気があるから」
にしたくありません。
もっと面白い理由があります。
1956 Chevroletは、すでにHandymanという実用的な2-Door Wagonを持っていました。
それなのにChevroletは、
別のBODYを作った。
1063Fではなく、
1064DF。
Roofを変えた。
Pillarを変えた。
Glass Areaを変えた。
Rear QuarterのCharacterを変えた。
Bel Airとして仕立てた。
荷物を積むだけならHandymanで足りた。それでもChevroletは、美しい2-Door Wagonを別に作った。
ここにNomadの価値があります。
CONCLUSION|1064DFは「Nomad」という名前以上に面白い
1956 Chevrolet Nomad。
Bel Air Series。
Model 2429。
Fisher Style 56-1064DF。
2-Door。
6-Passenger。
Station Wagon。
ここまではFactory資料で固定できます。
そして重要なのは、
150 Handyman 1263F。
210 Handyman 1063F。
Bel Air Nomad 1064DF。
1956 Chevroletには、
3種類もの2-Door Wagonが存在した。
Nomadは、その一番豪華なTrim Versionというだけではない。
別のBODY Characterを持つSpecialty Wagonです。
だからMUDIMUでは、
「1956 Nomadは人気があります」
では終わらせない。
なぜ1064なのか。
なぜHandymanとRoofが違うのか。
なぜGlassが違うのか。
なぜRear Quarterが違うのか。
そこまで追う。
Nomadを知るなら車名を見るな。1064DFを見ろ。
これがMUDIMUの1956 Nomadです。
MUDIMU Research Note
A|Primary Source確認済み
1956 Chevrolet Factory Specificationsに2429 / 56-1064DF / Bel Air Nomad / 2-Door / 6-Passenger Station Wagonとして記録。Chevrolet Motor Division発行資料です。
B|実車Tag確認
現存車でSTYLE 56-1064DFを確認。BODY CL 5837、Trim 591、Paint 707という実例も残っています。
B〜C|Nomad固有BODY Detail
Sloping B-Pillar、Hardtop的Roof Treatment、frameless door glass、radiused rear wheel openingなどが二次資料で確認できます。Parts Book/Fisher資料による部品単位の共通性確認は今後の課題です。
?|Production
7,886台と8,103台という異なる資料値あり。現時点では約8,000台。No.32で再検証。
要追加研究
1063F Handymanと1064DF Nomadについて、Door、Glass、Roof、Quarter Panel、Tailgate、Floor、Seat、Cargo Areaの共通部品/専用部品をParts Bookで照合する価値があります。
次の14|6-Passenger vs 9-Passenger Wagonでは、車名から一度離れます。
「1956 Chevroletは、同じWagon BODYの中にどうやって6人と9人を作り分けたのか」
ここをFactory Interior Dimensionsまで使って、BODY側から解剖します。

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