1956 Chevrolet No.58
1956 Chevroletをここまで追ってきました。
BODY。
Color。
Trim。
235 Blue-Flame Six。
265 Small Block V8。
そしてBODY × Engine。
しかし、Engineが決まってもまだ一台は完成しません。
Engineの力をRear Wheelsへどう伝えるのか。
そこで登場するのが、
Transmission。
1956 Passenger Chevroletでは、大きく見ると、
3-Speed Manual
3-Speed Manual with Overdrive
Powerglide Automatic
という選択肢がありました。
1956 Chevroletは「SixかV8か」だけではない。同じEngineでもTransmissionを変えることで、まったく違う性格のChevyを作れた。
TRANSMISSION MAP|1956 Passenger Chevroletの3本柱
まず基本を整理します。
| Transmission | Type | 特徴 |
|---|---|---|
| 3-Speed Manual | Manual | 基本となる3速Manual |
| 3-Speed + Overdrive | Manual + O/D | 高速巡航用Overdriveを追加 |
| Powerglide | Automatic | Chevroletを代表する2速Automatic |
これをEngine側と組み合わせて考えます。
1956 CHEVROLET
ENGINE
├─ 235 Six
└─ 265 V8
×
TRANSMISSION
├─ 3-Speed Manual
├─ 3-Speed + Overdrive
└─ Powerglide
ただし、すべてのEngine specificationとすべてのTransmissionが無条件に組み合わせられた、という意味ではありません。
Factory applicationは個別確認が必要です。
3-SPEED MANUAL|1956 Chevroletの基本
最も基本的なのが、
3-Speed Manual Transmission。
1950年代American CarというとPowerglideの印象が強いですが、Manual Chevroletも当然存在しました。
Column shift。
いわゆる、
Three-on-the-tree
として知られる操作方式が1956 Passenger Chevroletの基本的なManual configurationです。
現在Tri-Five Chevroletを見るとFloor shiftへ変更された車も多いため、
Floor shifterが付いている=Factory Manual仕様そのまま
とは限りません。
COLUMN SHIFT|Bench Seatと相性のよい配置
Column-mounted shifterには実用上の意味があります。
ShifterをFloor中央へ置かない。
そのためFront Bench Seat周辺を広く使えます。
1950年代のFull-size American Passenger Carでは、これは自然な考え方でした。
BODYだけ見ていると見落としますが、
Dashboard。
Steering column。
Front seat。
Transmission control。
これらも一つのInterior packageとして設計されています。
【画像予定:1956 Chevrolet 3-Speed Column Shift Factory Interior】
235 × 3-SPEED|「普通の1956 Chevy」の代表的な組み合わせ
235 Blue-Flame Six。
3-Speed Manual。
これは1956 Chevroletの基本的なMechanical combinationの一つです。
派手ではありません。
Dual Quadでもない。
Power Packでもない。
Automaticでもない。
しかし当時のChevroletを理解するなら、こうした仕様を落としてはいけません。
150。
210。
Bel Air。
BODYの豪華さとは別に、Manual transmissionという選択肢がありました。
265 × 3-SPEED|V8だからAutomaticとは限らない
逆も重要です。
265 V8だからPowerglide。
ではありません。
V8とManual transmissionという組み合わせも存在します。
つまり、
235 + Manual
235 + Powerglide
265 + Manual
265 + Powerglide
というように、EngineとTransmissionは別々の選択軸として考える必要があります。
もちろん高性能265ではTransmissionに条件が付く仕様があります。
そこを「V8だから全部同じ」としないことが重要です。
OVERDRIVE|3-Speed Manualにもう一つの顔を与える
1956 Chevroletで面白いのが、
Overdrive。
基本的な3-Speed ManualにOverdrive機構を組み合わせることで、高速巡航時のEngine speedを下げることができます。
これは現代の5速・6速Manualとは考え方が違います。
単純に、
「4-Speed Manualだった」
という話でもありません。
3-Speed Manualを基本に、巡航用のOverdriveを追加する。
これがポイントです。
OVERDRIVEは「速くする装置」だけではない
Overdriveという言葉からPerformance equipmentを想像するかもしれません。
しかし主目的は最高速度競争ではありません。
Highway cruising。
Engine rpm。
Noise。
Fuel consumption。
長距離移動。
こうした実用面に関係します。
1950年代のAmerican Highway環境が発達していく中で、Overdriveには大きな意味がありました。
3-SPEED vs OVERDRIVE|外からは分かりにくいVariation
BODY Variationなら、
2-Door。
4-Door。
Hardtop。
Wagon。
Convertible。
と外から分かります。
Transmission Variationは違います。
同じ1956 Bel Air 2-Door Sedanが2台並んでいても、
一台は普通の3-Speed。
もう一台はOverdrive付き。
という可能性があります。
外観はほとんど同じ。
しかし高速道路へ出れば性格が違う。
見えないVariationです。
POWERGLIDE|1950年代Chevroletを象徴するAutomatic
そして、
Powerglide。
Chevroletを代表するAutomatic Transmissionです。
1950年にChevrolet Passenger Carへ登場し、1956年にはすでにChevrolet Buyerにとって確立された選択肢になっていました。
1956 Passenger ChevroletのPowerglideは、
2-Speed Automatic
です。
現在の6速・8速・10速Automaticと比較してはいけません。
1950年代のEngine characteristicsとVehicle weight、Final driveを前提に成立していたTransmissionです。
POWERGLIDEは「ATだから遅い」で終わらない
Classic Car好きの中では、
Manualの方が面白い。
Powerglideは遅い。
という評価になりがちです。
しかしMUDIMUでは、現代の趣味車評価だけで1956年を見ません。
当時Automaticを選ぶ意味は大きかった。
Clutch operationが不要。
Urban drivingが楽。
Luxury感。
Convenience。
そしてChevroletが大衆車へAutomaticを広げていく流れ。
Powerglideは1956 Chevroletの文化そのものを見るためにも重要です。
BEL AIR × POWERGLIDE|1950年代American Carらしい組み合わせ
Bel Air。
Bench Seat。
Column周辺のAutomatic selector。
Powerglide。
この組み合わせは、1950年代American Passenger Carらしい世界を作ります。
High-performanceだけが1956 Chevroletではありません。
ゆったり乗る。
家族を乗せる。
街を走る。
長距離を移動する。
そのためのChevroletも大量に存在しました。
150 × POWERGLIDE|豪華装備だけのTransmissionではない
ここでもSeries hierarchyとMechanical equipmentを混同してはいけません。
Powerglideを、
Bel Airのような豪華SeriesだけのAutomatic
と考えるのは危険です。
150・210・Bel AirというSeriesと、Transmission choiceは別軸です。
簡素なBODY・TrimとAutomaticという組み合わせも、1956 Chevroletの選択肢を理解するうえで重要です。
235 × POWERGLIDE|SixでもAutomatic
前回までと同じ誤解があります。
AutomaticだからV8。
ではありません。
235 Blue-Flame SixとPowerglideという組み合わせもあります。
つまり、
Six × Automatic
という1956 Chevroletです。
これを理解していないと、現存する235 Powerglide carを見たときに「変わった仕様」と誤認してしまいます。
265 × POWERGLIDE|V8を日常的に使う
265 Small Block V8とPowerglide。
これも1956 Chevroletを象徴する組み合わせの一つです。
V8だから必ずPerformance志向ではない。
Automaticと組み合わせて、日常的に扱いやすいV8 Chevroletを作ることもできました。
Small Blockの成功を考えるうえで、ここは重要です。
265はSports Engineだけではなく、Automatic Family Carにも使えるV8だった。
CORVETTE|Passenger Carと同じ表では終わらない
Corvetteはまた別に考えます。
1956 Corvetteでは265 V8のみ。
しかしEngine specificationによってTransmissionとの組み合わせに違いがあります。
Corvetteでは、
3-Speed Manual
と、
Powerglide
が用意されました。
ただし高性能仕様ではManualとの組み合わせが重要になります。
特に240 hp High-lift cam仕様はManual transmissionとの組み合わせとして扱われます。
したがって、
1956 Corvette=全部Manual
でもなければ、
265=どのTransmissionでも同じ
でもありません。
CORVETTE × POWERGLIDE|Sports CarにもAutomaticがあった
現在の感覚では、初期Corvette=Manual Sports Carという印象が強いかもしれません。
しかしPowerglide-equipped Corvetteも存在します。
これは初期Corvetteの性格を理解するうえで面白い部分です。
Corvetteは最初から硬派なManual-only Sports Carとして完成したわけではありません。
American marketの中で、Luxury・Style・Performanceのバランスを探しながら発展していました。
240 HP × MANUAL|Transmissionまで含めてEngine仕様を見る
No.56で見た265 240 hp。
Dual Four-Barrel。
High-lift camshaft。
こうしたHigh-performance Engineでは、Transmissionまで含めてFactory specificationを確認する必要があります。
Engineだけを見て、
「240 hp仕様だ」
と判断しても、TransmissionがFactory applicationと合わなければ疑問が残ります。
Engine identificationはTransmissionまで見て完成する。
これがNo.59につながります。
BODY × ENGINE × TRANSMISSION|三つを重ねる
No.57では、
BODY × ENGINE
を見ました。
今回はそこへTransmissionを追加します。
1956 BEL AIR SPORT COUPE
│
├─ 235 Six
│ ├─ Manual
│ ├─ Overdrive
│ └─ Powerglide
│
└─ 265 V8
├─ Manual
├─ Overdrive
└─ Powerglide
これは構造を理解するための概念図です。
個々のEngine specification、BODY、TransmissionのFactory可否は、実車調査ではFactory documentationで照合します。
ここを一律に決めつけないことが大切です。
WAGON × TRANSMISSION|家族車だからAutomaticとは限らない
Wagonも同じです。
Handyman。
Townsman。
Beauville。
Nomad。
6-Passenger。
9-Passenger。
BODY Variationが非常に多い。
しかし、
Family WagonだからPowerglide。
Commercial-looking HandymanだからManual。
と決めることはできません。
BODYの用途イメージとFactory mechanical specificationは別々に確認します。
NOMAD|特別BODYでもTransmissionは調査対象
Nomadは特別なBODYです。
しかし、
NomadだからV8+Powerglide。
NomadだからHigh-performance仕様。
とは限りません。
Nomadでも、
Engine。
Transmission。
Rear axle。
をそれぞれ確認します。
BODYの希少性がMechanical specificationを自動的に決めるわけではありません。
REAR AXLE RATIO|Transmissionだけでも終わらない
Transmissionを調べると、次にRear Axle Ratioが関係してきます。
同じEngine。
同じTransmission。
それでもFinal drive ratioが違えば、走行感覚は変わります。
Acceleration。
Cruising rpm。
Hill climbing。
Fuel consumption。
1956 ChevroletのDrivetrainは、
ENGINE
↓
TRANSMISSION
↓
DRIVESHAFT
↓
REAR AXLE
↓
WHEELS
という一つのSystemです。
MUDIMUではTransmissionだけを孤立した部品として見ません。
COLUMN SELECTOR|Interiorを見るとTransmissionの手掛かりがある
現存車を確認するとき、Transmission identificationの入口になるのがInteriorです。
Steering column。
Selector。
Clutch pedal。
Shift indicator。
Floor modification。
これらを確認します。
ただし注意。
Column shifterは交換できます。
Floor shifterへ変更できます。
AutomaticからManualへConversionできます。
ManualからAutomaticへ変更することもできます。
現在の操作装置=Factory specificationとは限りません。
CLUTCH PEDAL|あるだけではFactory Manualの証明にならない
Clutch pedalがある。
Manual transmissionが載っている。
だからFactory Manual car。
とは限りません。
Conversionされた可能性があります。
Firewall。
Pedal assembly。
Linkage。
Transmission mounting。
Driveshaft。
Steering column。
Wiring。
こうした部分まで確認します。
POWERGLIDE CONVERSION|現存車では珍しくない
Classic Chevroletは長い年月の中で改造されています。
Original 3-SpeedからPowerglide。
PowerglideからManual。
PowerglideからTH350。
TH400。
700R4。
Modern overdrive automatic。
さまざまなConversionがあります。
特に現在、
AutomaticだからPowerglide
と決めるのは危険です。
後年のChevrolet Automaticが載っている車は多くあります。
FLOOR SHIFT|見た目に騙されない
1950年代風CustomでよくあるのがFloor shifterです。
現在Floor-mounted 4-Speedが付いている1956 Chevrolet。
格好いい。
しかしそれがFactory 1956 specificationとは限りません。
むしろ後年のPerformance modificationである可能性を考える必要があります。
MUDIMUでは、
格好いいかどうか
と、
1956 Factory configurationか
を分けます。
TRANSMISSION CASE|下から見る
本気でTransmissionを確認するならInteriorだけでは足りません。
Vehicle undersideを見る。
Transmission case。
Casting。
Identification markings。
Tail housing。
Linkage。
Crossmember。
Mount。
Driveshaft。
こうした部分を確認します。
Engine Bayだけで一台のDrivetrainを判断しません。
ORIGINAL TRANSMISSION|Engineと同じ考え方
Transmissionにも、
Original-to-car
Period Correct
Later Replacement
Modified
があります。
1956年型として正しいPowerglideが載っていても、その車がFactoryからそのTransmissionで出た証明とは限りません。
Engineと同じです。
「正しい部品が付いている」
と、
「新車時からその部品だった」
は別です。
RESTORATION|正しく見える車ほど確認する
完璧にRestorationされた1956 Bel Air。
Factory-looking 265。
Powerglide。
正しいInterior。
正しいSelector。
非常に説得力があります。
しかしRestorationで仕様そのものを変更することもできます。
SixからV8。
ManualからPowerglide。
210からBel Air風Trim。
Classic Chevroletでは珍しい話ではありません。
だから、
完成した見た目から過去を逆算しない。
Factory dataから現在の車を照合します。
MUDIMU CHECK|Transmissionを見る順番
現存1956 Chevroletでは、次の順番で確認します。
1|BODY / Series
何のChevroletか。
2|Engine
235 / 265 / Replacement。
3|Transmission type
Manual / Overdrive / Powerglide / Later transmission。
4|Controls
Column selector、pedals、indicator。
5|Transmission case
Casting・形状・Identification。
6|Linkage
Factory-styleか、Conversionか。
7|Mounting
CrossmemberやMountに加工がないか。
8|Driveshaft
変更の痕跡。
9|Rear axle
Drivetrain全体との整合。
10|Factory application
BODY・Engine・Transmissionの組み合わせが成立するか。
MANUALかPOWERGLIDEかで価値を単純に決めない
現在のCollector marketでは、
Manualの方が面白い。
Rare performance specificationの方が高い。
という評価になることがあります。
しかしMUDIMUはMarket Priceだけを基準にしません。
Original 235+Powerglide Bel Air。
Original 235+3-Speed 150。
265+Manual 210。
それぞれ1956 Chevroletとして意味があります。
価値は「一番速い仕様」だけにあるのではない。Factoryが実際に作った組み合わせを残していることにもある。
1956年のBUYERになって考える
1956年にChevrolet Dealerへ行ったとします。
まずBODYを選ぶ。
150か。
210か。
Bel Airか。
Sedanか。
Hardtopか。
Wagonか。
Convertibleか。
次にEngine。
Sixか。
V8か。
そしてTransmission。
Manualか。
Overdriveか。
Powerglideか。
Color。
Trim。
Options。
一台のChevroletが出来上がります。
現在のように「Gradeを選べばほぼ装備が決まる」という考え方だけでは理解しにくい世界です。
SERIES × BODY × ENGINE × TRANSMISSION
ここまでのMUDIMUを一枚にすると、
1956 CHEVROLET
SERIES
↓
150 / 210 / BEL AIR
↓
BODY
↓
SEDAN / SPORT COUPE / SPORT SEDAN
CONVERTIBLE / WAGON...
↓
ENGINE
↓
235 SIX / 265 V8
↓
TRANSMISSION
↓
3-SPEED / OVERDRIVE / POWERGLIDE
↓
COLOR
↓
TRIM
ここまで来ると、
「1956 Chevrolet Bel Air」
という名前だけでは、その一台をほとんど説明できないことが分かります。
MUDIMU VIEW|Transmissionは見えないBODY Variation
MUDIMUの主役はBODYです。
Transmissionは外からほとんど見えません。
しかし考え方はBODY Variationとよく似ています。
同じ基本Vehicleから、
用途。
予算。
好み。
走り方。
に合わせて仕様を分ける。
BODYが外側のVariationなら、
Transmissionは、
走り方のVariation
と言っていいでしょう。
CONCLUSION|同じ1956 Chevyでも、Transmissionで性格が変わる
1956 Chevrolet Passenger Carには、
3-Speed Manual
3-Speed Manual with Overdrive
Powerglide
という重要なTransmissionの選択肢がありました。
235 SixだからManualとは限らない。
265 V8だからPowerglideとも限らない。
Bel AirだからAutomaticでもない。
150だからManualでもない。
BODY。
Engine。
Transmission。
それぞれを別々に確認し、最後にFactory combinationとして一台へ戻す。
1956 ChevroletはBODYを選び、Engineを選び、さらに「どう走らせるか」まで選べた。
これで1956年の主要なMechanical Variationまで揃いました。
残る最後の一本は、これまで調べた知識を実際の一台を見抜く方法へ変えます。
No.59|1956 Chevrolet Identification|そのBODY・Engine・Transmissionは本当に1956年Factory仕様なのか。
図鑑として調べて終わるのではなく、現車を判断できるところまで持っていって1956年を締めます。

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