1957 Chevrolet No.08
1957 Chevrolet 150 Utility Sedan。
Factory Model 1512。
Fisher Body Style 1211B。
1957 Chevroletの中でも、MUDIMUが絶対に見落としてはいけない一台である。
一見すると、No.06で扱った150 2-Door Sedanによく似ている。
同じ150 Series。
同じ2ドア。
同じSedan系BODY。
しかもFisher Style Numberを見ると、
1502=1211
1512=1211B
わずか末尾に「B」が加わっただけだ。
しかしFactory specificationsでは、1512は通常のSedan群とは別に、One-Fifty Utility Sedan Model 1512として独立した項目が用意されている。
つまりこれは、単なる150 2-Door Sedanの装備違いとして片づけてはいけないChevroletだ。
しかも調べていくと、この地味なUtility Sedanが1957 Chevroletのもう一つの顔――Stock Car Racingへつながっていく。
Nomadとはまったく違う意味で、1512も1957 Chevroletの特別な一台なのである。
1512とは何だったのか
まずFactory上の位置を確認する。
1957 Chevrolet Passenger Car specificationsでは、通常Sedanについて、
1502
1503
2102
2103
2124
2402
2403
をまとめて掲載している。
ところが1512はそこへ入っていない。
次の独立項目として、
One-Fifty Utility Sedan — Model 1512
が掲載されている。
ここは非常に重要だ。
Utility Sedanは、単に「150 2-Door SedanからRear Seatを取り外した中古車」ではない。
ChevroletがFactory Modelとして用意したUtility仕様だった。
Model 1512 / Fisher Style 1211B
現在確認できるStyle資料では、
Model 1512
2-Door Utility Sedan
Fisher Style 1211B
として一致している。
通常の150 2-Door Sedanは、
Model 1502 / Fisher Style 1211
だった。
並べると、
| Model | BODY | Fisher Style |
|---|---|---|
| 1502 | 150 2-Door Sedan | 1211 |
| 1512 | 150 Utility Sedan | 1211B |
となる。
この1211と1211Bの差こそ、MUDIMUが追うべきところだ。
見た目が似ている。
番号も近い。
しかしChevrolet/Fisherは別Styleとして区別した。
では、何が違ったのか。
最大の違いはRear Seat
1957 Chevrolet自身が発行したStock Car Competition Guideには、1512について非常に分かりやすい説明が残っている。
Chevroletは1512を、要するにRear Seatを持たない2-Door Sedanとして説明している。さらにCompetition用途では、低価格で不要な重量が少ないことを利点として挙げている。
つまり通常の1502が6-passenger Sedanなのに対し、1512は3-passenger Utility Sedanだった。
ここで1512の意味が一気に見えてくる。
後席を必要としない人にとって、その空間をPassenger Spaceとして残しておく必要はない。
Rear Seatをなくす。
後方を荷物へ使う。
装備を簡素化する。
Sedan BODYを、人を運ぶためだけではなく「仕事に使える空間」へ振った。
それがUtility Sedanだった。
ただの「Rear Seat Delete」では終わらせたくない
ここはMUDIMUとして重要である。
1512を、
1502からRear Seatを取った車
と説明すれば、概要としては分かりやすい。
しかし日本一詳しい1957 Chevrolet資料を作るなら、それだけでは足りない。
本当に知りたいのはその先だ。
Rear Seatをなくした後、
Rear Floorはどう処理されたのか。
Package Shelfはどうなったのか。
Rear Interior Trimは1502と同じなのか。
Seat mounting部分はどう処理されたのか。
Cargoとして使う部分に専用部品があったのか。
1211と1211Bでは、どこまでBODY部品を共有したのか。
ここをFactory/Fisher/Parts資料まで追いたい。
現段階で確実に言えることと、まだ確認できていないことを混ぜない。
だから、この部分はResearch Noteにも残す。
Rear Side Windowにも注目したい
Utility Sedanを識別するうえでもう一つ興味深いのがRear Side Windowである。
複数の二次資料および現存1512の記録では、Utility SedanのRear Side Windowは固定式だったとされている。
通常の1502との比較では、ここも重要な研究点になる。
外から見れば、
「普通の150 2-Door Sedan」
に見える。
しかしRear Side Glassの作動方式まで見ると違いが出てくる。
MUDIMUでは最終的に、
1502 vs 1512
について、
Seat
Rear Interior
Rear Side Glass
Floor
Trim
Fisher Style
Factory purpose
を一枚の比較表にしたい。
1512はSedan Deliveryではない
ここも非常に重要だ。
150 Seriesにはもう一台、Utility用途の強いBODYが存在する。
Model 1508 Sedan Delivery。
1512 Utility Sedanと1508 Sedan Deliveryは、どちらも「人より荷物」という方向性を持っている。
しかし同じBODYではない。
1512はSedan系BODY。
1508はSedan Delivery BODYである。
Fisher Styleも、
1512=1211B
1508=1271
と明確に異なる。
Sedan DeliveryはWagon/Delivery系のRear Bodyを持つ。
一方1512は、基本的にはSedanの外形を残している。
ここが面白い。
「荷物を運ぶChevy」にも二つの考え方があった
1512と1508を並べると、1957 ChevroletのUtility Carに対する考え方が見えてくる。
1512 Utility Sedan
Sedanの姿を残しながら、Rear Passenger SpaceをUtilityへ転換する。
1508 Sedan Delivery
最初からDelivery用途へ強く振ったBODYを使う。
つまり、
SedanをUtility化する方法
と、
Delivery BODYを使う方法
が同じ1957 Chevroletに存在していた。
これはBODY Variationを追っているMUDIMUには非常に面白い。
1512を理解するためには1502だけでなく、1508とも比較する必要がある。
1512は「カタログの隅のChevy」では終わらない
ここまでなら1512は、
「珍しいUtility仕様があった」
という話で終わる。
しかし1957年は違う。
この1512には、もう一つ巨大な物語がある。
Stock Car Racingである。
そして、この部分については推測ではなく、非常に強いPeriod資料が残っている。
Chevrolet自身が1512をCompetition CarのBaseに選んでいた
1957年、Chevroletは1957 Chevrolet Stock Car Competition Guideを発行している。
そのGuideに登場する代表的なCompetition Stock Carが、
One-Fifty Utility Sedan Model 1512
なのである。
Chevroletは1512について、低価格で、頑丈で、不要な重量が少なく、Competition Stock CarのBaseとして適したModelであることを説明している。
これは非常に重要な資料だ。
後世の人間が、
「1512はRace Carに向いていたのではないか」
と推測しているのではない。
1957年当時のChevrolet自身が1512をCompetition Guideで取り上げている。
なぜ1512だったのか
理由はかなり合理的だ。
150 Series。
Utility Sedan。
Rear Seatなし。
装備が簡素。
重量を抑えやすい。
そして2-Door Sedan BODY。
Competition Guideでは1512を有力な選択肢としながら、非常に長いStraightで最高速が重要になるEventでは、よりStreamliningに優れる210 Sport Coupe Model 2154が有利になる場合があるとも説明している。
ここが素晴らしい。
Chevroletは単純に、
「一番Powerfulな車を使え」
とは言っていない。
BODYによるWeightとAerodynamicsの違いまで考えていた。
短いCourseなら軽さ。
高速CourseならStreamlining。
1957 ChevroletのBODY Variationが、Race Car選択にも関係していたのである。
これはMUDIMUで独立記事にする価値が十分ある。
そしてBlack Widowへつながる
1957 Chevrolet 150 Utility Sedanを調べれば、必ず出てくる名前がある。
Black Widow。
黒と白に塗り分けられた1957 ChevroletのCompetition Carは、現在では1957 Chevrolet Racingを象徴する存在になっている。
そしてそのBaseとして語られるのが、Model 1512 Utility Sedanだ。
ただし、ここで注意したい。
1512=Black Widowではない。
1512はRegular ProductionのUtility Sedanとして存在した。
そのBODYがCompetition CarのBaseとして非常に適していた。
そしてRace-prepared 1512の世界がある。
この順番を崩してはいけない。
「Black Widow仕様」という言葉を簡単に使わない
現在、1957 Chevroletの市場を見ると、
Black Widow Replica
Black Widow Tribute
Black Widow Style
と呼ばれる車が存在する。
それ自体はAmerican Car Cultureとして面白い。
しかしFactory Archiveとしては、
通常の1512
Period Competition-prepared car
後年のReplica / Tribute
を分けなければならない。
黒白に塗った150 2-Door SedanだからBlack Widow。
283 Fuel Injectionを積んだからBlack Widow。
そう単純には判断しない。
まずBODYが本当に1211Bなのか。
そこから始める。
1211Bという番号の価値
現存する1512のCowl Tagには、
STYLE 57-1211B
と確認できる例がある。
ここは実車Identificationでは非常に強い。
外観だけでは1502と1512を混同する可能性がある。
Rear Seatは後から取り外せる。
逆に後からSeatを取り付けることも考えられる。
GlassやInteriorも変更できる。
しかしFactory Body Styleを追えば、
その車が何として作られたのか
へ近づける。
MUDIMUがModel NumberとFisher Styleを重視する理由がここにある。
1512はどれほど軽かったのか
現在参照できるproduction/price tableでは、1512 Six-cylinder仕様についてShipping Weight 3,168 lbという数字が掲載されている。
同じ表では1502 Six-cylinder 2-Door Sedanが3,216 lbとされる。
単純差では約48 lb。
数字だけ見れば巨大な差ではない。
しかしCompetitionでは、
Rear Seat。
Interior equipment。
さらにRace preparation。
これらを含めてWeightを考える。
Chevrolet自身がCompetition Guideで1512の不要な重量の少なさを利点として挙げていることの方が重要である。
価格も1502より低かった
同じcompiled production tableでは、1512のFactory Priceとして、
Six-cylinder|$1,885
V8|$1,985
が掲載されている。
1502 2-Door Sedanは、
Six-cylinder|$1,996
V8|$2,096
とされる。
つまり表の数字では、Utility Sedanは通常の150 2-Door Sedanより約$111低い。
これも1512の性格をよく表している。
豪華さを加えて価格を上げる車ではない。
必要なものへ絞ったChevrolet。
その思想がPriceにも表れている。
ただし価格についてはPeriod Factory Price資料との再照合を続ける。
生産台数は、やはり一つに決めない
1512のProduction Numberにも資料差がある。
あるproduction compilationでは、
8,300台
としている。
Automobile Catalogも8,300台としている。
一方、別系統のcompiled dataでは、
8,817台
という数字が掲載されている。
つまり少なくとも現在の調査段階では、
8,300
と
8,817
が存在する。
MUDIMUではここで都合のいい数字を選ばない。
Production Numbers専用記事で出典系統を整理する。
8,300台でも8,817台でも、少数派であることは変わらない
数字そのものは確定させない。
しかしSeries内で1512が大量生産BODYではなかったことは見えてくる。
1502 2-Door Sedanや1503 4-Door Sedanと比較すれば、Utility Sedanは明らかに少ない。
だから現在1512を見る機会が少ないことにも納得できる。
さらに普通の1502から外観上の違いが分かりにくい。
後年にInteriorが変更されている可能性もある。
結果として、
本物の1512を1512として認識すること自体が難しくなる。
ここにもMUDIMUが記録する価値がある。
Utility Sedanは「3人乗りのSedan」という不思議な存在
1512を現代の感覚で見ると、かなり変わった車だ。
大きなAmerican Sedan BODY。
2ドア。
Trunkもある。
しかしRear Seatはない。
3-passenger。
だったらWagonを買えばいいのではないか。
Sedan Deliveryでいいのではないか。
そう考えたくなる。
しかし、その中間に1512が存在した。
Passenger Sedanの外観を保ちながら、後方をUtilityへ使う。
この微妙な位置こそ面白い。
Sedan Deliveryほど商用車に見えない
ここが1512の魅力の一つだと思う。
Sedan Deliveryなら、外から見てもUtility/Commercial色が強い。
しかし1512は外観だけならSedanに近い。
つまり、
普通のPassenger Carの姿をしたUtility Vehicle
なのである。
仕事にも使える。
荷物も積める。
しかし外観はChevrolet Sedan。
この考え方は、現在ではかなり珍しく感じる。
だからこそ1950年代American CarのBODY Variationとして記録しておきたい。
1502と1512を写真だけで判別できるか
MUDIMUとしては、最終的にここまで行きたい。
真横のPeriod Photoを一枚見て、
1502なのか1512なのか。
何を見れば分かるのか。
Rear Side Window。
Interior。
Rear Seat。
Trim。
Body Tag。
どこまで外観で判断できるのか。
どこから先はTagを見なければならないのか。
そしてRestorationされた車では何が変更され得るのか。
これは将来的に、
1957 Chevrolet 1502 vs 1512完全識別
として独立記事にしていいテーマである。
1512は1957 Chevroletの「裏の主役」かもしれない
1957 Chevroletの主役を挙げれば、
Bel Air Sport Coupe。
Convertible。
Nomad。
Fuel Injection。
誰もが納得する。
しかしBODY研究を始めると、別の車が浮かび上がる。
150 Utility Sedan 1512。
見た目は地味。
豪華ではない。
生産台数も多くない。
Collector CarとしてNomadほど知られているわけでもない。
ところがFactory資料を開くと、
独立したUtility Sedanとして存在する。
Rear Seatを持たない。
1211Bという専用Styleを持つ。
そしてChevrolet自身のStock Car Competition Guideで、Competition Baseとして取り上げられている。
これは面白くないはずがない。
1957 Chevroletは華やかさだけではない
1957年はFinとChromeの時代として語られる。
Bel Airを見れば、それはよく分かる。
しかし同じ年に、
装飾を削った150があり、
さらにその150からRear Seatまで削ったUtility Sedanがある。
その車がRace Trackへ向かう。
この振れ幅が1957 Chevroletの面白さだ。
NomadからUtility Sedanまで。
ConvertibleからSedan Deliveryまで。
Family SedanからStock Carまで。
全部1957 Chevroletである。
だから55本では終わらない。
一台ずつ掘れば掘るほど、記事が増える理由が分かってくる。
Model 1512を忘れない
1957 Chevrolet 150 Utility Sedan。
Model 1512。
Fisher Style 1211B。
3-passenger。
Rear Seatなし。
普通の150 2-Door Sedanによく似たBODY。
しかしFactoryは別Modelとして用意した。
そしてCompetitionの世界では、その簡素さと軽さが武器になった。
MUDIMUが作りたいのは、有名車だけを並べたClassic Chevrolet図鑑ではない。
こういう一台まで、なぜ存在したのかを追える図鑑である。
1957 Chevroletを本気で調べるなら、
1512は絶対に飛ばしてはいけない。
MUDIMU Research Note
A|Factory Model 1512
1957 Chevrolet Passenger Car specificationsで、One-Fifty Utility Sedan Model 1512を独立項目として確認。通常の1502 / 1503等のSedan群とは別ページで仕様が掲載されています。
A|Fisher Body Style 1211B
Model 1512は2-Door Utility Sedan / Fisher Style 1211BとしてStyle資料で確認。通常の150 2-Door Sedan 1502はStyle 1211です。
A|3-Passenger / Rear Seatなし
1957 Chevrolet Stock Car Competition Guideは1512をRear Seatを持たない2-Door Sedanとして説明しています。Production tableでも3-passenger Utility Sedanとして記録されています。
A|Competition Baseとしての1512
Chevrolet自身の1957 Stock Car Competition Guideで、One-Fifty Utility Sedan Model 1512がCompetition Stock Carの代表的な選択肢として扱われています。これは後世の伝承だけではなくPeriod Chevrolet資料で確認できます。
A|2154とのCompetition上の比較
同Guideでは1512を有力なCompetition Modelとしながら、非常に高速なCourseではStreamliningの利点からTwo-Ten Sport Coupe Model 2154が適する場合があることも説明されています。
A|1512と1508は別BODY
Utility Sedanは1512 / 1211B。Sedan Deliveryは1508 / 1271。用途が近くてもFactory Model・Fisher Styleとも異なるため、MUDIMUでは別BODYとして記録します。
B|Shipping Weight / Factory Price
Compiled production tableでは1512 I-6を3,168 lb / $1,885、V8を$1,985と記録しています。Factory PriceについてはPeriod price literatureとの再照合対象とします。
?|Production Number
現在確認した資料には8,300台と8,817台の二系統があります。現段階では確定せず、一次資料を優先してProduction Numbers記事で再検証します。
?|1211と1211BのBODY共有範囲
1502と1512の外観は近いものの、Fisher Style末尾の違いだけからBODY部品の共有範囲を推測しません。Rear Interior、Floor、Seat mounting、Glass mechanism、TrimをFisher Body / Parts資料で確認します。
?|Rear Side Window
複数の二次資料および現存車記録では1512のRear Side Windowを固定式としていますが、Factory/Fisher資料による構造確認をさらに進めます。
?|Black Widowの定義
1512と1957 Chevrolet Stock Car Racingの関係はPeriod Chevrolet資料で確認できますが、Regular Production 1512、Period Competition-prepared car、後年のReplicaを混同しません。「Black Widow」の成立、SEDCO、Competition equipment、Engine specification、個体数については独立記事で一次資料を優先して研究します。
?|BODY × COLOR × TRIM
1512のFactory Paint、Interior Trim、Utility専用Interior treatmentの完全な組み合わせは、1957 Paint/Trim資料およびParts資料から別途台帳化します。
黒猫タンゴの視線
1512は、Nomadとは正反対の方向から1957 Chevroletの面白さを見せてくれる。
Nomadは「Wagonをここまで美しくできるのか」というChevrolet。
1512は「Sedanからここまで削れるのか」というChevrolet。
Rear Seatまでなくした簡素な150が、やがてRace Trackへ向かう。
華やかな1957 Chevroletの裏側に、こんなChevyがFactory Modelとして存在した。
こういう一台を見つけるたびに、1957 ChevroletはBel Airだけ追っていては駄目だと思う。
MUDIMUで残したいのは、まさにこういうChevyだ。
