MUDIMU No.040|1957 Original Prices|BODY別新車価格
はじめに|1957 Chevroletは、BODYによっていくら違ったのか
1957 Chevroletを調べるとき、私たちはスタイリング、エンジン、カラー、インテリア、そして生産台数に注目することが多い。しかし、当時の自動車を理解するうえで、もうひとつ欠かせない数字がある。それが新車価格だ。
1957年のChevroletには、One-Fifty(150)、Two-Ten(210)、Bel Airという3つの主要シリーズがあった。同じ年式、同じメーカーの乗用車であっても、2ドアセダン、4ドアセダン、ハードトップ、コンバーチブル、ステーションワゴンでは価格が異なっていた。さらに、同じBODYでもBlue-Flame直列6気筒とV8エンジンの違いによって、基本価格に差が生じた。
つまり、1957 Chevroletの価格は、単純に「150は安い、210は中間、Bel Airは高級」と覚えるだけでは不十分だ。シリーズ、BODY形式、エンジン、装備という複数の要素を重ねて読む必要がある。
今回のMUDIMU No.040では、確認できるモデル別価格資料をもとに、1957年当時の新車価格をBODY別に整理する。特に、150 Handyman、210 Handyman、Townsman、Beauville、Bel Air NomadといったWagon Familyの価格差にも注目する。
価格表は単なる数字の一覧ではない。ChevroletがどのBODYをどの価格帯に配置し、どのような選択肢を用意していたのかを読み解くための資料なのである。
1|最初に理解したい「Factory Price」の意味
1957 Chevroletの価格資料を見るとき、最初に確認したいのは、掲載されている金額が何を意味するかという点だ。
今回扱うのは、当時のモデル別一覧に記載された基本価格、いわゆるFactory PriceまたはBase Priceに相当する数字である。現代の中古車市場における販売価格や、現在のレストア済み車両の評価額とはまったく異なる。
また、当時の基本価格は、購入者が実際に支払う最終金額と必ずしも一致しない。エンジンやトランスミッションの選択、パワーステアリング、パワーブレーキ、エアコンなどのオプション、販売地域、税金や登録費用などによって、最終的な支払額は変化した。
したがって、本稿の価格を読むときは、まず車両の基本価格を比較し、そのうえで追加装備を考えるという順序が重要になる。
もうひとつ注意したいのは、価格表の資料ごとに記載形式が異なることである。シリーズ別に6気筒とV8を分けている資料もあれば、モデルの代表価格だけを掲載する資料もある。BODY名称やModel Numberの表記に違いがある場合もあるため、数字だけを抜き出して比較すると誤解が生まれやすい。
MUDIMUでは、価格を単独の数字として扱うのではなく、Model Number、BODY形式、エンジン区分をセットにして記録する。
2|1957 Chevroletの価格体系を俯瞰する
1957年の乗用車ラインアップを大きく分けると、150、210、Bel Airの3シリーズになる。
150は比較的簡素な仕様を中心としたシリーズであり、実用性や購入価格を重視する層に向けたモデル群だった。210は装備と価格のバランスを担い、セダンからハードトップ、ステーションワゴンまで幅広いBODYを用意していた。そしてBel Airは、外装のクローム装飾や専用トリムを含む、より上級のシリーズとして位置付けられていた。
この3段階の構成は、単に内装の豪華さを分けるだけではない。同じような車体形式であっても、シリーズによって価格帯が変わる仕組みを生み出していた。
代表的な例として、150の2ドアセダン、210の2ドアセダン、Bel Airの2ドアセダンを比べると、基本的なBODY形式は似ていても、価格には明確な差がある。これはシリーズによる装備や仕上げの違いを反映したものだ。
一方、シリーズが違えば必ず同じ幅の価格差になるわけではない。ステーションワゴンやコンバーチブルのように、BODYそのものの構造や製造上の特徴が価格に大きく影響するモデルも存在した。
1957 Chevroletの価格を理解するには、シリーズの階層とBODYの違いを、別々の要素として捉えることが大切だ。
3|One-Fifty(150)シリーズの新車価格
150シリーズは、1957 Chevroletの価格体系を理解するうえで基準になるシリーズだ。ここでは2ドアセダン、4ドアセダン、Utility Sedan、Handyman Wagonを取り上げる。
以下は、モデル別価格一覧に掲載された基本価格である。金額は当時の米ドルで、6気筒とV8を区別している。
| Model Number | BODY | 6気筒価格 | V8価格 |
|---|---|---|---|
| 1502 | 2-Door Sedan | $1,996 | $2,096 |
| 1503 | 4-Door Sedan | $2,048 | $2,148 |
| 1512 | 2-Door Utility Sedan | $1,885 | $1,985 |
| 1529 | 2-Door Handyman Wagon | $2,307 | $2,407 |
出典:OldRide「1957 Chevrolet 150」。掲載価格とモデル区分をもとに整理。
この表で最も目を引くのは、Utility Sedanが最も低い価格帯に位置していることだ。6気筒仕様の基本価格は1,885ドルで、150シリーズの2ドアセダンよりも111ドル低い。
Utility Sedanは、通常の後席を備えた乗用車とは異なり、後部に3人分の座席を設ける一般的なセダンとは違う実用的な構成を持っていた。後部の使い方を割り切ることで、車両の役割を明確にしたモデルといえる。
一方、4ドアセダンは2ドアセダンより52ドル高い。ドアが2枚増えることは、単に乗降口が増えるだけではない。ドアや側面構造、窓まわりなどの違いが車両価格に反映されていた。
150 Handyman Wagonの基本価格は6気筒仕様で2,307ドル。2ドアセダンと比較すると311ドル高い。荷物を積める広い後部空間を持ち、後席も利用できるステーションワゴンは、実用的なモデルでありながら、セダンより上の価格帯に置かれていた。
この価格差は、150が単純な「安いクルマのシリーズ」ではなかったことを示している。150の中にも、最小限の実用性を重視するUtility Sedanから、家族や荷物を運ぶHandyman Wagonまで、異なる用途に対応したモデルが存在していた。
150 Seriesで見えてくること
150シリーズの価格差は、シリーズ内でもBODYの用途が価格に影響していたことを示す。
特にUtility SedanとHandyman Wagonは、どちらも一般的な乗用セダンとは異なる実用性を持ちながら、その方向性は異なっていた。Utility Sedanは後席を割り切った低価格志向のモデルであり、Handyman Wagonは人と荷物の両方を運ぶBODYとして設定されていた。
価格だけを見ても、当時のChevroletが実用性を一種類にまとめず、用途別に選択肢を用意していたことが読み取れる。
なお、150シリーズのSedan Deliveryは商用BODYとして別に扱う必要がある。今回参照した150シリーズの価格表には、Sedan Deliveryの確実な基本価格が同じ形式では掲載されていないため、ここでは未確認の金額を補っていない。
4|Two-Ten(210)シリーズの新車価格
210シリーズは、1957 Chevroletの中核となるシリーズのひとつだ。通常のセダンに加えて、Del Ray Club Coupe、Sport Coupe、Handyman Wagon、Townsman、Beauvilleなど、BODYの選択肢が豊富だった。
6気筒とV8の価格を比較すると、150シリーズと同じく、多くのモデルでV8仕様が100ドル高い価格設定になっている。
| Model Number | BODY | 乗車定員 | 6気筒価格 | V8価格 |
|---|---|---|---|---|
| 2102 | 2-Door Sedan | 6 | $2,122 | $2,222 |
| 2103 | 4-Door Sedan | 6 | $2,174 | $2,274 |
| 2124 | Del Ray Club Coupe | 6 | $2,162 | $2,262 |
| 2154 | Sport Coupe | 6 | $2,204 | $2,304 |
| 2129 | Handyman Wagon | 6 | $2,402 | $2,502 |
| 2109 | Townsman Wagon | 6 | $2,456 | $2,556 |
| 2119 | Beauville Wagon | 9 | $2,563 | $2,663 |
| 2113 | Sport Sedan(4-Door Hardtop) | 6 | $2,270 | $2,370 |
出典:OldRide「1957 Chevrolet 210」。価格表のモデル名とBODY形式をもとに整理。
210シリーズで注目したいのは、同じシリーズの中でも価格帯に幅があることだ。
最も基本的な2ドアセダンは6気筒仕様で2,122ドル。一方、9人乗りのBeauville Wagonは2,563ドルで、441ドルの差がある。V8仕様同士で比較しても同じ441ドルの差になる。
この差を、単純に装飾の多さだけで説明することはできない。Beauvilleは9人乗りの4ドアステーションワゴンであり、通常のセダンとは異なる乗車定員とBODY構成を持っていたからだ。
210シリーズのSport CoupeとSport Sedanも、価格を考えるうえで興味深い存在だ。Sport Coupeは2ドアのハードトップ系BODY、Sport Sedanは4ドアのハードトップ系BODYであり、通常のセダンとは屋根や側面の構造が異なる。
そのため、価格表を読む際には「2ドアか4ドアか」だけでなく、「SedanかHardtopか」「Wagonか」というBODYの種類まで確認しなければならない。
Del Ray Club Coupeはなぜ通常の2ドアセダンより高いのか
Del Ray Club Coupeは、210シリーズの2ドア車を理解するうえで重要なモデルだ。価格表では通常の2ドアセダンより40ドル高い。
この価格差は大きくないように見えるが、同じ2ドアのBODY形式を基礎としながら、Del Rayという独自のモデル名と内装上の特徴を持つ仕様が存在したことを示している。
ここで注意したいのは、Del Rayを独立した上位シリーズと誤解しないことだ。1957年のDel Ray Club Coupeは210シリーズに属するモデルであり、Bel Airと同じ階層に置かれたシリーズではない。
価格表では、モデル名だけでなくModel Numberを確認することで、シリーズとBODYの関係を整理できる。
210シリーズの価格から読み取れること
210シリーズは、単に150とBel Airの中間にあるだけではない。一般的なセダン、ハードトップ、2ドアワゴン、6人乗りの4ドアワゴン、9人乗りの4ドアワゴンを同じシリーズ内に揃えた、幅の広いモデル群だった。
つまり、210を理解するには、シリーズの位置付けとBODYの選択肢を同時に見る必要がある。価格表は、その幅広さを数字で示す資料でもある。
5|Bel Airシリーズの新車価格
Bel Airは、1957 Chevroletの上級シリーズとして知られている。クローム装飾や外装トリムの仕上げに特徴があり、通常のセダンからハードトップ、コンバーチブル、Nomadまで、さまざまなBODYを展開していた。
Bel Airの価格を整理すると、通常のセダンとハードトップの差に加えて、コンバーチブルとNomadの価格が目立つ。
| Model Number | BODY | 6気筒価格 | V8価格 |
|---|---|---|---|
| 2402 | 2-Door Sedan | $2,238 | $2,338 |
| 2403 | 4-Door Sedan | $2,290 | $2,390 |
| 2454 | Sport Coupe(2-Door Hardtop) | $2,299 | $2,399 |
| 2413 | Sport Sedan(4-Door Hardtop) | $2,364 | $2,464 |
| 2434 | Convertible | $2,511 | $2,611 |
| 2409 | Townsman Wagon(4-Door・6人乗り) | $2,580 | $2,680 |
| 2429 | Nomad Wagon(2-Door・6人乗り) | $2,757 | $2,857 |
出典:OldRide「1957 Chevrolet Bel Air」。基本価格を掲載資料から整理。
Bel Airの2ドアセダンは6気筒仕様で2,238ドル。150の2ドアセダンより242ドル高い。同じ2ドアセダンというBODY形式であっても、シリーズによって価格差が生まれていたことがわかる。
さらに、Bel Airのコンバーチブルは6気筒仕様で2,511ドル。屋根を開閉できるBODYは、通常のセダンより高い価格帯に置かれていた。
そして、Bel Air Nomadは6気筒仕様で2,757ドル、V8仕様では2,857ドルとなる。Nomadは、今回の乗用車価格表の中でも特に高い価格帯に位置するモデルである。
ここで重要なのは、Nomadが単なるBel Airのステーションワゴンではなかったことだ。独自のルーフライン、特徴的な側面ガラス、専用の外装意匠を持つ2ドアワゴンとして設計されており、一般的なHandyman WagonとはBODYの性格が異なっていた。
Nomadの価格は、Bel Airというシリーズの上級性だけでなく、独特のBODY構成とモデルとしての位置付けも含めて考える必要がある。
6|BODY別に価格を比較する
ここまでの価格表を、BODYの違いという視点で整理してみよう。
まず、同じ2ドアセダンでも、150、210、Bel Airでは基本価格が異なる。
| Series | Model | 6気筒価格 |
|---|---|---|
| 150 | 1502 2-Door Sedan | $1,996 |
| 210 | 2102 2-Door Sedan | $2,122 |
| Bel Air | 2402 2-Door Sedan | $2,238 |
150から210への差は126ドル、210からBel Airへの差も116ドルだ。3シリーズの価格は、単純に一定額ずつ上昇するわけではないが、シリーズの違いが基本価格に反映されていたことがわかる。
次に、4ドアセダンを比較する。
| Series | Model | 6気筒価格 |
|---|---|---|
| 150 | 1503 4-Door Sedan | $2,048 |
| 210 | 2103 4-Door Sedan | $2,174 |
| Bel Air | 2403 4-Door Sedan | $2,290 |
この場合も、150と210の差は126ドル、210とBel Airの差は116ドルとなる。2ドアセダンと同じ差額である点は興味深い。
ただし、これはあくまで今回の価格表に記載された基本価格の比較だ。装備やオプションを加えた車両同士を比較すれば、実際の購入金額は異なる可能性がある。
BODYの種類が変わる場合は、価格差も変わる。たとえば、150 Handyman Wagonと150 2ドアセダンの価格差は311ドル。210 Handyman Wagonと210 2ドアセダンの価格差は280ドルである。
つまり、価格はシリーズだけで決まるものではない。シリーズを揃えて比較することでBODYの影響が見え、BODYを揃えて比較することでシリーズの影響が見える。
これが、BODY別価格表を読む基本的な方法だ。
7|Wagon Familyの価格比較|Handyman・Townsman・Beauville・Nomad
1957 ChevroletのWagon Familyは、価格とBODYの関係を研究するうえで特に面白い領域だ。同じステーションワゴンというカテゴリーでも、150、210、Bel Airというシリーズの違いに加えて、2ドアか4ドアか、6人乗りか9人乗りか、独自のスポーツワゴンかという違いがある。
まず、150 Handyman Wagonと210 Handyman Wagonを比べる。
| Model | Series | 6気筒価格 |
|---|---|---|
| 1529 Handyman | 150 | $2,307 |
| 2129 Handyman | 210 | $2,402 |
価格差は95ドルだ。同じ2ドアワゴンという基本的なBODY形式でありながら、シリーズの違いによって価格が変わっていた。
次に、210の2ドアHandymanと4ドアTownsmanを比較する。
| Model | BODY | 乗車定員 | 6気筒価格 |
|---|---|---|---|
| 2129 Handyman | 2-Door Wagon | 6人 | $2,402 |
| 2109 Townsman | 4-Door Wagon | 6人 | $2,456 |
価格差は54ドル。4ドアのTownsmanは、2ドアのHandymanよりも高い基本価格に設定されている。
同じ210シリーズのTownsmanとBeauvilleを比較すると、さらに別の違いが見える。
| Model | BODY | 乗車定員 | 6気筒価格 |
|---|---|---|---|
| 2109 Townsman | 4-Door Wagon | 6人 | $2,456 |
| 2119 Beauville | 4-Door Wagon | 9人 | $2,563 |
BeauvilleはTownsmanより107ドル高い。両者は4ドアワゴンという点で共通するが、Beauvilleは9人乗りとして設定されていた。
この違いを単なるシート数の違いだけで説明することはできない。乗車定員の違いにともなう室内構成や後部の使い方、BODY仕様の違いが関係している。価格を比較するときは、名称だけでなく、乗車定員とBODYの形式を一緒に確認したい。
そして、210 BeauvilleとBel Air Nomadを比べると、価格差はさらに大きくなる。
| Model | Series | BODY | 6気筒価格 |
|---|---|---|---|
| 2119 Beauville | 210 | 4-Door・9人乗り Wagon | $2,563 |
| 2429 Nomad | Bel Air | 2-Door・6人乗り Wagon | $2,757 |
NomadはBeauvilleより194ドル高い。Nomadは9人乗りではなく、むしろ乗車定員だけを見ればBeauvilleより少ない。それでも高価だったのは、単純な輸送能力だけで価格が決められていたわけではないことを示している。
Nomadには、専用のBODYデザインと上級シリーズとしての位置付けがあった。一般的な実用ワゴンと同じ基準では評価できないモデルなのである。
8|最も安いモデルと高価なモデル
今回確認した乗用車の基本価格表では、150 Utility Sedanの6気筒仕様が1,885ドルで、低価格側の代表例となる。一方、Bel Air NomadのV8仕様は2,857ドルで、今回取り上げた主要BODYの中でも高い価格帯に位置する。
両者の差は972ドルだ。
この数字は、1957 Chevroletのラインアップが、同じメーカーの同じ年式であっても、かなり広い価格帯を持っていたことを示している。
ただし、この比較は「最も安い車」と「最も高い車」を単純に並べたもので、装備を完全に揃えた比較ではない。Utility SedanとNomadでは、BODYの構造も用途もシリーズも異なるため、価格差のすべてをシリーズの格付けだけに帰することはできない。
むしろ、この価格差から見えてくるのは、Chevroletが1957年に幅広い用途の車を販売していたという事実だ。必要最小限の実用性を重視するモデルから、個性的なデザインを持つ上級ワゴンまで、購入者は用途や予算に応じて選ぶことができた。
9|6気筒とV8の価格差
1957 Chevroletの価格表では、多くのモデルで6気筒仕様とV8仕様の価格差が100ドルとなっている。
たとえば、150 2-Door Sedanは6気筒が1,996ドル、V8が2,096ドル。210 2-Door Sedanは6気筒が2,122ドル、V8が2,222ドル。Bel Air 2-Door Sedanは6気筒が2,238ドル、V8が2,338ドルだ。
同じBODYとシリーズを前提にすると、V8を選ぶことによる基本価格の上昇が、価格表から読み取れる。
ただし、V8といってもエンジンはひとつではなかった。1957年には265立方インチV8に加えて、283立方インチV8が設定され、出力や吸気方式などが異なる複数の仕様が存在した。高出力のエンジンパッケージやFuel Injectionなどを選択する場合、基本価格だけでは最終的な車両価格を説明できない。
したがって、「V8仕様の価格」と「特定の高出力V8を搭載した車両の価格」は分けて考える必要がある。
本稿の表は、モデル別の基本価格を比較するためのものだ。すべてのエンジンオプションを組み合わせた最終価格表ではない。
10|オプション装備は車両価格をどう変えたのか
1957 Chevroletの購入価格を考えるうえでは、基本価格に加えて、追加装備の影響も無視できない。
当時の装備には、パワーステアリング、パワーブレーキ、パワーウィンドウ、パワーシート、オートマチックトランスミッション、エアコン、高出力エンジンなどがあった。
これらはすべての車に標準装備されていたわけではなく、モデルや仕様によって選択できる装備が異なっていた。追加装備を選ぶほど、基本価格から最終的な購入価格が離れていく。
参考資料のひとつであるMotorTrendの1957 Chevrolet特集では、当時の代表的なオプション価格として、パワーステアリング約70ドル、パワーブレーキ約54ドル、Powerglide約188ドル、Turboglide約231ドル、エアコン約565ドルなどが紹介されている。これはすべてのBODYに共通する完全な価格表ではないが、オプションが総額に与える影響を考える参考になる。
たとえば、基本価格2,338ドルのBel Air 2-Door Sedanに、約188ドルのPowerglideを加えた場合、単純な足し算では2,526ドルとなる。さらに別の装備を選べば、総額は上昇する。
ここで重要なのは、基本価格だけを見て当時の車両全体の価格を断定しないことだ。資料に記載された価格が車両本体の基本価格なのか、特定の装備を含んだ価格なのかを確認する必要がある。
MUDIMUでは、基本価格とオプション価格を分けて記録する。これによって、モデル別の価格比較と、個々の実車の仕様研究を混同せずに済む。
11|価格表とModel Numberを照合する
価格を研究するとき、シリーズ名だけで車両を特定するのは不十分だ。
たとえば「1957 Chevrolet Wagon」と書かれていても、それが150 Handymanなのか、210 Handymanなのか、210 Townsmanなのか、210 Beauvilleなのか、Bel Air Nomadなのかによって、BODY形式も基本価格も異なる。
このため、MUDIMUの価格データでは、次の情報をできる限り一緒に記録する。
- Model Year:1957
- Series:150、210、Bel Air
- Model Number:1502、1529、2109、2429など
- BODY形式:2-Door Sedan、4-Door Sedan、Handyman Wagon、Townsman、Beauville、Nomadなど
- 乗車定員:6人乗り、9人乗りなど
- Engine区分:6気筒、V8
- 基本価格:当時の米ドル
- 参照資料:価格表の名称とURL
これらを一体で記録しておけば、別の資料に記載された価格と照合しやすくなる。価格表に記載されたモデル名が省略されていたり、BODY名称の表現が異なっていたりする場合でも、Model Numberを手掛かりに確認できる。
ただし、Model Numberだけですべての装備や個別車両の仕様がわかるわけではない。実車を研究する際には、車両識別情報、Cowl Tag、エンジンやトランスミッションの資料など、別の情報も必要になる。
価格表は、車両を理解するためのひとつの資料であり、すべてを単独で証明する資料ではない。
12|価格資料の食い違いをどう扱うか
1957 Chevroletの価格を調べていると、ウェブサイトや資料によって、同じモデルの価格が異なって記載されている場合がある。
たとえば、同じBel Airの2ドアセダンでも、資料によって価格の記載が異なることがある。モデル別一覧では6気筒2,238ドル、V8 2,338ドルという価格が掲載されている一方、別の二次資料では異なる価格が示されることもある。
こうした違いを見つけたとき、すぐにどちらかを誤りと判断するのは適切ではない。価格の対象となる仕様、資料の作成年、改訂の有無、掲載価格の定義などを確認する必要がある。
また、生産台数と価格が同じ表に掲載されている場合も注意したい。生産台数が6気筒とV8を合算した数字であっても、価格欄は6気筒とV8を分けていることがある。価格と生産台数の数字が、必ずしも同じ集計単位であるとは限らない。
MUDIMUでは、確認できた価格をモデルごとに整理し、資料間に差が見つかった場合には、その差を記録対象とする。資料の根拠が十分でない金額を推測で補い、確定したFactory Priceとして公開することは避ける。
この考え方は、No.039のBODY × COLOR × TRIM研究にも通じる。個別の情報がそれぞれ存在することと、それらが特定の実車で正しく組み合わさっていたことは、同じではない。価格についても、数字だけでなく、その数字が何を示しているのかを確認することが重要だ。
13|1957年当時の価格を、現代の感覚だけで評価しない
1957年の1,885ドルや2,857ドルという金額を、現在の通貨感覚だけで眺めても、当時の車両の位置付けを十分に理解することはできない。
当時の米国における所得水準、生活費、自動車ローン、税金、販売店の費用などを考慮しなければ、購入者にとっての負担感はわからない。また、現在の物価に換算する場合も、単純な物価指数による換算と、当時の平均賃金に対する割合では、結果の意味が異なる。
本稿では、十分に検証できていない現代換算額を断定的に示すことはしない。まずは、当時の価格表に記載された米ドルの金額を、BODYとシリーズごとに正確に整理することを優先する。
そのうえで、当時の所得や自動車市場の資料を追加調査すれば、1957 Chevroletが一般家庭にとってどのような買い物だったのか、より具体的に考察できる。
価格研究は、数字を現在の感覚に置き換えることだけが目的ではない。当時の市場の中で、各モデルがどのように位置付けられていたかを理解することが目的なのである。
14|MUDIMU Research Note|1957 Chevroletの価格を読む
今回の調査では、1957 Chevroletのモデル別基本価格を、150、210、Bel Airの3シリーズに分けて整理した。
150シリーズでは、Utility Sedanが低価格側に位置し、Handyman Wagonはセダンより高い価格帯に設定されていた。210シリーズは通常のセダンからハードトップ、Handyman、Townsman、Beauvilleまで、BODY形式によって価格に幅がある。Bel Airシリーズでは、セダンやハードトップに加えて、コンバーチブルとNomadが上位の価格帯に位置していた。
特に重要なのは、同じBODY形式でシリーズを比較するとシリーズによる価格差が見え、同じシリーズでBODYを比較すると車体形式による価格差が見えることだ。
また、6気筒仕様とV8仕様の価格差が、多くのモデルで100ドルとなっている点も確認できた。ただし、V8の基本仕様と高出力エンジンパッケージ、Fuel Injectionなどのオプションは区別して扱う必要がある。
今回の価格表は、OldRideの1957 Chevrolet 150、210、Bel Air各モデルの価格一覧を中心に整理した。MotorTrendの特集は、当時のオプション価格を理解する補助資料として参照した。
主な参照資料
- OldRide|1957 Chevrolet 150
https://www.oldride.com/library/1957_chevrolet_150.html - OldRide|1957 Chevrolet 210
https://www.oldride.com/library/1957_chevrolet_210.html - OldRide|1957 Chevrolet Bel Air
https://www.oldride.com/library/1957_chevrolet_bel_air.html - MotorTrend|Celebrating the 57 Chevy’s 50th Anniversary
https://www.motortrend.com/features/m5lp-0701w-1957-chevrolet-history
これらはモデル別価格を比較するための資料として有用だが、すべてがChevroletの当時の一次価格表そのものというわけではない。Factoryの原資料をさらに確認できた場合は、価格の対象範囲や改訂の有無を含めて照合する余地がある。
MUDIMUでは、価格の数字を確定情報として扱う前に、モデル名、Model Number、BODY形式、エンジン区分を一致させる。確認できない価格は推測で埋めず、未確認として残す。この姿勢を、今後の生産台数やFactory仕様の研究にも引き継いでいく。
黒猫タンゴの視線|価格表には、そのクルマの役割が表れる
1957 Chevroletの価格表を見ていると、クルマの値段は、ただ高いか安いかを示すものではないと感じる。
Utility Sedanは、必要な機能を絞り込んだ実用車として低価格帯に位置していた。Handymanは人と荷物を運ぶためのワゴンとして、通常のセダンより高い価格帯に置かれていた。TownsmanとBeauvilleは、同じ4ドアワゴンでも乗車定員が違い、それぞれ異なる役割を持っていた。
そしてNomadは、荷物を運ぶというWagonの基本的な用途を持ちながら、独自のスタイリングと上級モデルとしての魅力を備えていた。9人乗りのBeauvilleよりも高い価格が付けられていたことは、当時のChevroletのラインアップを考えるうえで象徴的だ。
同じ1957年のChevroletでも、購入者が求めるものは同じではなかった。実用性を重視する人もいれば、家族全員が乗れる車を求める人もいる。走りやスタイリングを重視する人もいる。メーカーは、そうした違いに応えるためにBODYとシリーズを用意し、価格の階層を作っていた。
価格表を読むということは、当時の購入者がどのような選択肢を持っていたかを読むことでもある。
MUDIMUが研究したいのは、数字だけではない。その数字の背後にある、クルマの役割と時代の価値観だ。
まとめ|1957 Chevroletの価格はBODYとSeriesの組み合わせで読む
1957 Chevroletの基本価格をBODY別に整理すると、3つの重要な点が見えてくる。
第一に、150、210、Bel Airというシリーズの違いは、同じBODY形式でも価格差を生んでいた。第二に、同じシリーズの中でも、セダン、ハードトップ、ステーションワゴン、コンバーチブルなどのBODY形式によって価格が変わっていた。第三に、6気筒とV8の基本価格差に加え、オプション装備によって最終的な購入価格が変化していた。
そして、Wagon Familyの比較からは、実用性だけでなく、乗車定員やBODYの独自性も価格に関係していたことがわかる。
価格表を正しく読むには、金額だけでなく、Model Number、BODY形式、エンジン区分、資料の定義を合わせて確認しなければならない。
次回のMUDIMU No.041では、1957 ChevroletのProduction Numbers、つまりBODY別の生産台数を研究する。今回整理した価格と生産台数を並べることで、どのBODYがどの価格帯に位置し、どれだけの台数が生産されたのかという、もう一段深い比較へ進むことができる。
nternal Links:
No.023|1957 Chevrolet Station Wagon完全ガイド
No.024|150 Handyman|2-Door Wagon
No.025|210 Handyman|2-Door Wagon
No.026|210 Townsman|4-Door 6-Passenger Wagon
No.027|210 Beauville|4-Door 9-Passenger Wagon
No.028|Bel Air Townsman|4-Door 6-Passenger Wagon
No.029|Bel Air Nomad|Tri-Five Nomad最終年
No.030|1957 2-Door Wagon比較|150・210・Nomad
No.031|6-Passenger vs 9-Passenger Wagon
No.032|1957 Wagon BODY MAP
No.034|Sedan Delivery
No.035|Sedan Delivery vs Handyman Wagon
No.036|1957 Factory Colors完全ガイド
No.038|1957 Interior & Trim
No.039|BODY × COLOR × TRIM
No.041|1957 Production Numbers
No.055|1957 Chevrolet Identification
